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人道は情欲を制して成り立つ

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今日の言葉

二宮翁夜話より引用

47〕 人道は情欲を制して成り立つ
翁のことばに、人道というものは人造のものだ。だから、自然に行われるところの天理とは別ものなのだ。天理とは、春は生じ、秋は枯れ、火はかわいたほうに燃え、水は低いほうに流れるというように、昼も夜もめぐり動いて万古かわらないものをいうのだ。ところが人道は、日々夜々に人力を尽し、保護をして成り立つものだ。だから天道の自然にまかせれば、天たちまちすたれて行われない。それゆえ、情欲のままにしていては、人道は立たないのだ。たとえば、漫々たる海上には道がないように見えるけれども、航路を定めてこれによらなければ暗礁にふれることになる。道路も同じことで、これによらずに自分の思うままに行けば突き当ってしまうし、言語も同じことで、思うままに言葉を出せばたちまち争いを生ずる。だからして人道は、欲を押え、情を制して、つとめ努めて成り立つものだ。うまいものを食い、よい着物を着たいのは天性の自然だが、これを編め忍んで、家産の分内にしたがわせる。 身の安逸やぜいたくを願うのも同様だ。好むところの酒を控え、安逸を成め、欲するところの美食美服を押え、分限の内をはぶいて有余を生じ、他人にも譲り将来にも譲らなければならぬ。これを人道というのだ。
【引用 二宮翁夜話(上) 福住正兄:原著 佐々井典比古:訳注】

人間の心にある天理と人道

基本的に、人間は怠け者です。

自分たちが楽しいことや気持ちのいいことを好み、反対に面倒なことや不快なことを嫌うのは自然な反応です。

そのため、我々は常に快楽を追い求めがちです。これは人間の心に根ざした天理です。

しかし、私たちは、快楽だけを追い求めていては生きていけないことも理解しています。

それゆえに、人々は協力し合って社会を創り出し、生きていく道をつくりました。

これが人間社会、即ち人道です。

社会で生きていくためには、一人一人が天理の心(怠け心)を抑え、人道を歩む意識が必要です。

便利さが増す一方で、人間の心の天理が肥大化し、人道が消えかけている現状を見てとれます。

その結果、自己中心的な事件が起こるのだと思います。

自然界でも、天理を放置すれば最終的には荒廃します。

人間の心にも同じ原則が適用されます。

だからこそ、二宮金次郎は農民たちに人道を教え続けたのでしょう。

心の荒廃を改めるために必要なのは、人道の教えだったからです。

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