幕尻照ノ富士優勝 何故

 初場所の徳勝龍の優勝の記憶がまだ冷めやらない今場所、また幕尻の照ノ富士が優勝した。

 徳勝龍と違うところは照ノ富士が脚の大きな故障を抱えていることと、優勝が勢いで成し遂げられたのではないという点だ。

 取り口を見ていると下の方の力士とでは実力に格段の違いがあることが分かる。まるで横綱と相撲を取っているようで、高安以外では歯が立たなかった。

 脚の怪我がまだ完治しないにも関わらずこんな状態だ。もう大関の実力が回復したとも見える。白鵬が衰えた現在、主役は誰だろうかと疑ってしまうのは無理ないだろう。

 朝之山は大関になりたてだからまだ実力が発揮できないかも知れないが、それでも照ノ富士に堂々と取られ負けてしまった。

 それはまぐれではない。奇襲作戦を駆使されたのでもない。まるで照ノ富士が横綱のようだった。

 今後照ノ富士の取り口は研究されるから来場所が楽しみだが、どうも大関などの上位陣の実力が前と比べて落ちているようにも思える。

 それにしてもまたモンゴル出身の力士が台頭してきた。これは何もモンゴルの人の方が相撲に向いているのではない。日本人で体力抜群の人が相撲というスポーツに行かなくなったからだろう。

 因習的な世界は今では疎んじられるが、相撲は因習的だから伝統の技術が伝えていけるとも考えられる。

 昔小錦が引退後アマチュアの世界相撲のチャンピオンの何とかいう人と稽古をした。その風景がテレビで放映された。

 そのチャンピオンは小錦より更に体重があって、確か300㎏を超えていたと記憶している。

 その彼が小錦に向かっていくと小錦は腕を振り回した。そうすると彼は土俵の外からある程度距離がある板壁まですっ飛んでしまった。

 それほど小錦というか大相撲の力士の力はすごい。筋肉の使い方が違うのだ。それは筋肉の外側を使うのではなく、一番中心から力を伝えることで達成される。

 その日本の伝統の武術は大相撲以外にはもう見ることができない。柔道は山下で最後だったし、剣道でも影を潜めた。

 科学的な身体の使い方は研究されているだろうが、そうするとどうして大相撲の力士はそんなに強いのか分からない。

 大学出身の力士はそれなりの力はあるだろうが、横綱まで昇進したのは輪島だけだ。伝統の技法というのはそれほど価値がある。

 今はそれでも伝統の力も衰えつつある。その証拠は白鵬だ。彼の筋肉の使い方は抜群だが、昔の力士はそんな筋肉の使い方をほぼ全ての力士がやっていた。

 それが白鵬に44回優勝をさらわれた真の原因だ。もし貴乃花が現役だったら、そうはいかなかったと推測される。

 原因の一つが稽古量の少なさだ。考えて取る相撲では力が出し切れない。これと言った技法に開眼すればそれを頭脳に刻み込み、自然にその技法が駆使することができる。それには稽古が欠かせない。

 正代や隠岐の海は体格的にはとても優れているが、力はまだまだだ。それは稽古の少なさから来ているのではないか。

 今の力士は体の大きさを武器にする。そうすると怪我が多くなるだろう。肉弾相打つという相撲は面白さが半減するし、怪我が増える。

 確かに大きな力士でなくては上位に進めないが、それほど大きくなくても貴景勝や大栄翔のような力士も頑張っている。

 来場所以降、照ノ富士の怪我が悪化せず、病気を抑えられればいつも優勝に絡んでくるだろう。大関陣やその他優勝を狙う力士は照ノ富士の攻略の作戦を建てなければならない。それには理に叶った稽古を多くやるより方法はない。

酒巻 修平

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