人、日本人 一外交官の見た明治維新

約150年前明治維新の少し前に日本にやってきた「アーネスト サトウ」という英国人の通訳が残した上記表題の本がとても面白い。そこには自分自身を含めた人の在り様や日本人の考え方、行動パターンが余すところなく書かれている。

 日本の社会構造がそのころどうであったか、明治維新とはどのような意味を持つかなど第三者的に描かれている。

 考えさせられるのは明治維新の意味や意義についてである。よく言われるように明治維新は市民による革命であったということは全くの誤解である。維新後武士階級は廃止されたが、戸籍には皇族、家族、武士などの身分の表示が残り、選挙は身分が高いなど特定の人によってなされた。

 薩摩、長州、土佐等の雄藩が徳川に成り代わって天下を取りたかった。その成功が明治維新で、主役を担った武士とも言えない「山形有朋」などの下士が高い地位を占め、大きな土地を自分の物にし、政治に参画した単なる政変であった。

何の遠慮もなく書かれた当時の政治家の行動パターンが面白い。大名やその重臣は自身に差しさわりがあるような件では嘘を言い、回答を伸ばし、誤魔化し、そして理解不能な文書を書く。

勿論例外はいるが、がりがり亡者とは彼らのことだ。一般人民のことなど全く顧みない態度は見事とも言える。保身を図ることに汲々として、征服した外国人に阿る。これは現在と同じでないか。

政府高官は長年の習慣で論理とは違う考え方でものを処理しようとするものだから論理的な英国人に理解されない。

勿論英国人が立派と言うのではない。当時のイギリスは先進国で論理的な考え方がより効率的であるのを経験上知っていただけなのだが、そういう目で見るものだから日本人の高官は馬鹿にされた。

近代的な軍備をしていなかった当時の国即ち藩がイギリスの戦艦と戦争をしても勝てるわけがない。負けた藩は手の平を返し、同志であるかのように変身する。知った幕府の情報を漏らし、また宴会を開いて女をあてがい、そして外国人は喜んで供応に応じる。情けない。

平民で、召使に雇われた男は主人の金をくすね、盗む。貧乏人特有の状態で、7年前の震災で犯罪が少なかったのは日本人が貧乏でなくなったからだ。また物見高く、珍しい外人を見るために群れを成して集まり、過度の親切をする。

但し日本の物造りは当時から優秀だったようで、これにはこの主人公も脱帽している。平民は一般に困窮して悪事を働き、ミーハーだが、外国人の同クラスの人間より出来が良い。これが日本を現在も支えている原動力で、政治家はそのころから3流であった。

英国人側も人格者は少ない。これも現在と同様であろうが、弱いと見ると傘に罹って虐めるし、馬鹿にする。英国は当時最先進国で、植民地は作り、略奪を繰り、世界を我が物とするとんでもない国だ。

アメリカもアフリカから奴隷を連れて来て、我儘のし放題だが、これが許されるのは戦争に勝ったことだ。本に書いてあるような横暴が通じるのは人間が持つ弱点だろう。日本は明治維新前に負けたが、今大戦も敗戦だったので、70年以上経つ現在でも屈辱を味わっている。軍備を増強し、戦争はもう過去の物だと宣言する必要があるとこの本は教えている。

「サトウ」は日本人の女と見ると「綺麗、美しい」などと興味を示す。そのころから日本の女性は外人にもてた。彼の上司は感情的、直情的で外交官には適しない人柄の持ち主で、そんな男が当時の英国では身分だけで政治家を勤めている。

 「サトウ」は頭が良いがまだ若い。物欲があり、女に弱く、自分を高く見せ、自慢したい。未来予想は当たらないし、通訳なのに外交官と称している。英国人は女王陛下の国の人間だから日本の天皇には敬意を表するが、日本人がひれ伏す将軍など一介の政治家並みの見方しかしない。一般的な西欧人の態度である。

 「サトウ」は客観的な物の見方ができ、英国でも仕事の出来は試験とは無関係だと言っている。日本では国を左右する高級官僚の採用は今も記憶だけを問う試験でなされる。恐ろしい。この本は色んな意味で人間の善悪を教えてくれる。

酒巻 修平

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