長七郎江戸日記
我が家の夕飯は6時ころから始まる。私は時代劇が好きなので、月曜日から金曜日までは「長七郎江戸日記」か「水戸黄門」を見るのを楽しみにしている。
「水戸黄門」は比較的新しく始まった。そのときは「長七郎」ではなく、そちらの方を見ていた。でも話の筋道があまりに単純なので、「長七郎」に戻った。
でもこちらも少し問題がある。再放送なので、止むを得ないのかも知れないが、すでに見たものが何度も放映される。
しばらく前のものは筋を忘れている部分があるのだが、もう4度も5度も見たのは流石に見る気がしない。
そのときは「水戸黄門」を見る。筋は大体決まっている。黄門一行がたまたま道中で出会った人の家に泊まる。その家の誰かが悪者から無理難題を突き付けられているのを助けるというものだ。
もっと細かい筋も大体2つくらいしかない。だからこのドラマは視聴率が落ちて一度放映中止になったと聞いている。
原作者がいなくて、脚本家が筋も書いたので、バラエティに富んだ筋を書けなかったのだろう。
ここが難しい。筋が複雑すぎると、付いて行くのに多少努力しなければならないので、酒を飲みながらの夕飯では見るのが面倒。筋があまりに単純すぎると想像でき過ぎて見る気がしない。
「長七郎」はその点丁度良い。最後は悪者がやっつけられるのが分かっているのだが、細かい筋は違う。
それに出演者の演技が良い。長七郎役の里見浩太朗はなかなか芸達者だし、とてもハンサムで格好が様になっている。
この人は現代劇をやらしてもなかなかのもので、得難い役者だ。そこら中のドラマに出演しているが、実は「水戸黄門」でも主役級を演じる。
「長七郎」では悪者をやっつけた後、一周りして刀を収めるのは蛇足だ。もっと前のバージョンではそんな演技はなかった。
使っている刀は「大般若長光」というらしいが、これは原作者「村上元三」が創作したのだろうと思っていたが、ひょんなんことからそれは国宝として現実にあるのだと分かった。
東京国立博物館にあるというので、2,3年前に見入ったことがある。今は展示されていないが、確かにある。
ネットで調べると古来名高い太刀で備前長船派(おさふねは)の刀工、長光の代表作らしい。
でも太刀は馬上で使用するもの。刀とは実は違うのだと博物館では書いてあった。太刀は刃を下に向け、刀は反対に刃を上に向けて即戦の役に立てたと言う。
長七郎が帯びていたのは太刀の筈から、村上元三が読者はそこまで分からないと考えたのか、純粋な間違いかそれは今となっては分からない。
それに見ていてちょっと違和感のあるものところがある。若年寄が悪者であったりして長七郎が退治に乗り込むのだが、屋敷の庭が狭すぎる。
なお残念なことに長七郎もその他の演技者も酒を飲む場面で実際に酒を飲んでいる感じがしない。これは監督が至らないのか、それとも演技者が未熟なのか、どちらとも分からない。
もう一点気になることがある。それは野辺に竜胆が咲いて場面だ。その種類は「オオヤマリンドウ」と言って1000m以上くらいのやや高山にしか見ることができない種類だ。それが江戸の郊外に生えているのはおかしい。多分花屋さんで買ったものだろうが、担当の人はもう少し気にして欲しい。
他の場面でも野の花が咲いていることがある。鉢植えを下したのだろうが、品種改良されてものを使っているので、日本の原風景と違和感がある。
そんなことを気にしながら一合の酒を飲みながら見ると、とても幸せで、めしも上手い。
「長七郎」か「水戸黄門」を見終わってしまうと、7時からは見る物が少ない。水曜日には「御家人斬九郎」がある。これも時代劇。
こちらの俳優は演技がもっと良い。特に蔦吉役の若村麻由美。もっと美しい女優もいるだろうが、化粧映えがする女優で時代劇では極め付きの美女だ。
明日からまた見ることができる。仕事を5時までに切り上げて、急いで家に帰る。再放送なので、出演者が今は年を取っている。美貌が崩れた女優もいて、時間の容赦なさを実感する。私は時代劇ファンだ。
酒巻 修平