小結の優勝

平成30年九州場所千秋楽、相星だった大関の高安が負けて、小結の貴景勝が勝ち優勝した。引退した貴乃花の後押しがあったような精神力の強さがこの優勝をもたらしてように感じる人も多かったであろう。

この場所は横綱3人全員と大関の豪栄道が休場したし、もう一人の大関栃ノ心も右足の親指の負傷が影響して大関らしい成績を残せなかった。

 さらに優勝争いを演じた高安も腰に故障を抱えていて下位の力士などには勝利を積み重ねたが体は不調だったはずだ。

 貴景勝の優勝は立派ではあるが、周囲の状況がこの優勝をもたらしたとも言える。何しろ強い力士がいなかったのだから、優勝のチャンスは非常に大きかったのだ。

 貴景勝は小結だから来場所良い成績を上げると大関に昇進する可能性もあると言う。横綱に昇進するわけではないので、それは許すとしても強いと言ってもこの力士は勢い相撲を持ち味としている。

 かつてもそんな大関はいたがどうも一味違う。見た目には相撲がどたばたとしているように感じられるのだ。栃ノ心が大関に上がったときのような圧倒的な強さが備わっていない。

 小兵だから仕方はないのだが本人の責任はないにしても休場している力士が相撲と取っていたら本当に優勝しただろうかと疑問が持ち上がる。

 今場所は本当に詰まらなかった。私は何十年来かの相撲ファンであるが、あまり見る気がしなかった。優勝した貴景勝には申し訳がないが、今回の優勝の意義は高くない。

 それにしても怪我を抱えている力士が多すぎる。原因は定かではないが、どうも相撲の取り方に問題があるような気がして仕方がない。

 勢い相撲というかタイミング相撲というか、立ち合いの一瞬の駆け引きと流れがそのまま相撲の勝敗に左右する。放映に出てくる解説者が口を揃えて立ち合いが勝敗の行方を決するというようなことを言う。

 横綱でさえそんな感覚で相撲をとるから体の構えがきっちりとできていない。稽古場でもおそらくそんなことを念頭に置いて力士は稽古を積んでいるのだろう。だから無理な角度の筋肉の使い方を強いられる。

 じっくりと腰を落ち着け正常な体位で適正な力の入れ方をすればもう少し怪我が減るのではないかと素人考えが浮かぶ。親方や相撲関係者はこの怪我の原因あるいは遠因が何であるかを解明して力士に怪我が起こらないよう指導、留意すべきではないだろうか。

 そう言えば昔のような相撲の取り方を今の力士はしなくなった。一瞬の立ち合いに全てを掛け、攻撃するようも防御する方も体の構えが良くない。

 相手に勝つにはスピードも要求されるであろうが、長い目で見れば無理なスピードを求めて取り組むから負けた力士だけではなく、勝った力士も怪我をすることが多くなるのだ。

 これが近代相撲というのであろうか。詰まらない。全く詰まらない。がっぷり四つになって相手に呼吸をさせた方が勝ちを得るという栃錦対若乃花の相撲を思い出す。派手な動きはなかったが、息詰まるような攻防があったことは今も記憶にあるが、そんな相撲はもう一切ない。

 日本の武道の技術が今も残っているのは辛うじて相撲だけだろう。観客はそれを見たいのだ。柔道はオリンピック種目になって本当の意味の柔道ではなくなった。最後の柔道家は山下康弘だ。それ以降はオリンピックのルールに縛られて本来の柔道ができていない。

 貴乃花は立ち合いに拘らず相手を受けてそれからゆっくりと捌いていく所謂横綱相撲を取った。白鵬はやや近いがやたら立ち合いの小細工が多い。しかし相撲を取る体勢や筋肉の使い方が適切なので怪我をしなかった。

 怪我がなかなか治らない理由の一つが詰め込み巡業日程だと思う。相撲協会は幹部の利益を優先して考え、力士を結果的に使い捨てにしている。協会の幹部には目のある誠意的な人を加入させてはどうだろうか。

今の状態だと大相撲は衰退するだろう。本当の横綱相撲を取る力士の出現を待っていて栃ノ心を見ていたが、やはり怪我をしてしまった。怪我を失くすのも必要だが、その前に怪我の原因を明らかにして怪我をしないように協会関係者は私道すべきだ。もっとも貴乃花が引退してそんな人物が大相撲協会にいるように見えないが。

酒巻 修平

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