今日の言葉
イソップ寓話より引用
269)猪と馬と猟師
猪と馬が同じ場所で草を食んでいた。猪がいつも草を踏み潰し水を濁らせるので、馬は懲らしめてやりたいと思い、猟師に助太刀を求めに行った。すると猟師が、おとなしく馬具を着け自分を乗り手にしてくれない限り、助けてやれない、と言うので、馬は万事引き受けた。猟師は馬にうち勝ると、猪をやっつけ、そのまま馬を連れ帰って、飼葉桶につないでしまった。 このように多くの人が、怒りで後先を忘れて、敵に仕返しを望みながら自分が他人の手に落ちるのだ。
【引用元 岩波文庫 イソップ寓話集 著 イソップ 翻訳 中務哲朗】
怒りにまかせると失敗する
コロナ禍前の出来事。
週末の終電に乗りました。終電ということもあり、車内は大混雑でした。発車間際、1人の男性が飛び乗ってきました。
すると、扉近くにいた男性が足を踏まれたようで「痛えな!」と大きな声を上げました。飛び乗った男性も素直に謝罪すればよかったのですが、「混んでいるのだから仕方がないだろう」と反論してしまいました。
その後、2人の言い争いはエスカレートし、「次の駅で降りろ!」という声が上がりました。次の駅で2人は口論しながら降りていきました。おそらく、この電車が終電であることを忘れてしまったのでしょう。
そもそも、なぜ1人の男性は発車間際に飛び乗ったのでしょうか。終電で帰りたかったからではないでしょうか。目的は終電で帰ることだったはずが、途中から相手との口論が目的に変わってしまいました。
しかし、怒りにまかせるとこういったことはよくあります。最近では、煽り運転も多いと言われています。煽り運転をする人は怒りの感情をコントロールできない人です。その結果、事故を起こし、本来の移動という目的を忘れてしまうのです。
このように多くの人が、怒りで後先を考えられなくなり、本来の目的を達成できなくなってしまいます。それは、今も昔も変わらないことなのです。
イソップ寓話集の「猪と馬と猟師」を読んで、そのようなことを感じました。