脱税と節税の微妙な違い
税務署は納税者のことをどのように考えているのか。考えれば当たり前なのだが納税者は基本的に税金を支払いたくないと考えているだろうと想定する。そこでそのような納税者は嘘を付くと思って、全体的な税の徴収額を調整しているのだ。
確かに脱税する会社は多い。特に経営者が日本国籍を持っていないとか、あるいは国籍は所得しても自分は日本人だと心から考えていない人の脱税は多い。だから税務署は余計にあるいはできるだけ早く徴税するのだ。
それ以外に滞納すれば極めて高い金利を取るが、自分たちが間違って過剰に徴収した額について還付する金利は低い。これは深く分析すれば憲法違反の行為なのだ。
だがそのような理由で税務署や国を訴えても勝ち目はない。何故なら判事(裁判官)は政府に任命され、政府よりの見方をどうしてもするからだ。ただことが大きく報道されると裁判所も公正になる。
アメリカと違って日本には真の民主主義は成立していない。司法、行政、立法が三権であるが、ほぼ与党の意のままに動かしているとみて良い。韓国はもっと酷い。大統領が司法に代わって判断を下し、日本が戦前に韓国の労働者を不当に強制労働に駆り立てたと一方的な大きな間違いの判決を下したことは記憶に新しいだろう。
フランスでは証拠などを提示しなくても警官は一般人を週間まで拘束できるとされているそうだ。これはフランス人に聞いた話だ。すなわち真の民主主義に近い制度が成立している国はアメリカしかない。
さて税務署はそのような考えのもとで「見なし」とう制度を持っている。会社の経理処理が税務署から見ておかしいと考えられると「見なし」をして売上高などを設定することも多い。
おしぼり業者から納入されたおしぼりの数に照らし合わせて入店客の数をみなすこともする。
売上を意図的に少なく申告するとこれは脱税だ。だが3月決算の会社が売先と話し合い、納品を4月1日にしてもらうとその分はその期の売上にはならないからそれは脱税ではない。納品とはある商品の所有権が買い手に移った時点のことである。
厳密には倉庫で相手側への出荷準備が整った時という判例もあるから、出荷準備が整うと納品となる。何かこじつけのように思えるが事実だ。
会社が所有していて社長が住んでいる家の庭に池があるとしよう。その池が長年の風雨にさらされて劣化してきて水漏れが出た。これは補修しなければならない。するとこれは修繕費であるから損金扱いされる。
だが目の肥えた社長が池の全体的なデザインが気に食わないことがある。こんな場合は池を改修するあるいはデザインを変更して作り直すこともあるだろう。
これは損金として処理できない。何故ならそれは新しい池の構築だからだ。だが税務署は見に来ないし、来ても家宅に入る権限がない。こんな場合、池の補修だとして、損金で処理する会社がある。
特に中古の家を買った時には諸所にこんなケースがあるだろう。人の好みは千差万別だからだ。それを損金で処理するか、改築として損金処理するかで税金の支払い額が大きく変わることになる。
損傷していなくて改修をした場合損金で処理すれば脱税だ。だが税務署は見に来ない。さあ、あなたはどうする。
社長が出張に行く。泊まったホテルは一泊20万円。それを損金処理するとどうなるのだろうか。
20万円は実際に支払った額だから損金処理をして良いと考えられるが、実はそうではない。経費はビジネスをするのに要する費用だから、損金はそのように主旨に沿った支出のみに適用される。
社長はいつも快適な環境で良い考えを捻出したい。安全でなければならない。それは良いとしても20万円も支払うのは行き過ぎである。こういう場合は旅費規程を定めておき、宿泊費、日当などは定額を出張者が受け取れるようにしておけば良い。
そうすると一泊で10000円しか支払っていないとしても、旅費規程で40000円まで認められていると40000円受け取って、差額は実質収入だ。これは無税である。いた
税務署の悩みは会社が申告した決算書に脱税の要素が含まれているとしても、それを証明しなければならないという点である。これを挙証責任は税務署側にあると言う。それはそうだ。会社はこれこれの売上を上げて、これこれの費用を使ったと言っている訳だから、それが嘘だと思えばそれを証明しなければならないだろう。
今子供が40歳だとしよう。父は会社を経営していて個人財政は大きく余裕がある。子供が6000万円の家を購入しようとしたときそのうち4000万円を支払ってやったとする。
そうすると贈与税が関与してくる。これを回避するには子供に毎年110万円贈与していたと父親は主張する。(年に110万円までの贈与は非課税。以前は110万円でなかった時期があるので注意)税務署はそんな証拠がないじゃないかと主張するだろう。
だが子供との取り決めで贈与していた金額を預かっておいたと主張すればどうだろうか。父親側、税務署側には証拠がない。だが父親はそう主張する限り税務署は証拠を提出しなければならない。
そこで贈与を受け取った子供に父親が言っていることが本当かと尋ねる。そこでそんな事実はないと言ってしまえば、4000万円の贈与は課税対象になってしまう。だが父親と子供の間で税務署にはどのように説明するか話し合って、口裏を合わせておけば税務署は父親の言っていることが虚偽であるとは証明できなくなる。
ただ税務署もプロだからとても巧妙に子供に質問するだろう。だから結果的には如何に説明するかが鍵となる。このように脱税と節税は紙一重の関係にある。
税務署の決め事は年々複雑、綿密になる。だがこれが却って自縄自縛になり、抜け穴が多くなる。国家も会社も確かに狡いのだ。
酒巻 修平