京大卒の人の会社運営

 この人と知り合ったのは誰かの紹介だったと思うのだが、やはり覚えていない。工学部の出身だと記憶している。何年か無料で経営コンサルタントをした。毎月1度会社の下の喫茶店で2時間ほど話したが、役に立ったかどうかは定かではない。

 この人から教わったこともある。それは水のことであった。水はつの水素原子と1つの酸素原子が結合した分子であるが、この結合は電気的なもので、どうも安定しないということであった。

 だから多くの水分子が電気的に塊り合い、巨大な分子群にあるらしい。分子の塊が大きければ大きいほど水としての役目は小さくなるようだ。だからそんな水は飲んでも美味しくない。だがそんな水も長く良い状態で保存すると分子群が少しずつ離れていき、水の性質も良くなるようだ。

 ウイスキーやワイン、酒を熟成すると含まれている水分の分子群が小さくなり、保存期間が長ければ長いほど美味しくなるのはその所為だと教えてもらった。

 私側から何をアドバイスしたか今はもう覚えていない。だがその人の評価では私のアドバイスは具体的で分かり易いと良い点を付けてもらった。

 この人は水の料金減免プランをビジネスにしていた。上水を使うと下水に流さなくても下水料金を課される。これは一般的には出した水や水分は下水に流すからだと水道局は説明する。

 だが庭に撒いた水や冷却槽の水は蒸発するか地下に吸い込まれて下水とならない。これに対して計測すると下水料金が免除される。この制度を利用して大きなスーパーなどに働き掛け、下水料金を免除してもらう装置を設置して計測し、下水料金の賦課を免れるというのがこの人のビジネスだった。

 ある時あまり営業結果が出ないので、一緒に行ってみた。そこでは私が制度を説明するとスーパーの店長さんは「そうですか。これは売込みだったんですね」

と今までその人が度々訪れていた目的が分からなかったと判明した。

 それからは話しがとんとん拍子に進み、契約にこぎつけ、これがその人の会社の唯一の収入源になった。ところがあまりビジネスが進展しないし、資金繰りも窮屈なので、私は300万円ほど融通してあげた。

 それに私の会社の社員を無料で派遣するとも提案したが、これが誤解されて自分のビジネスが奪われると思われてしまった。だがビジネスと言っても私が取ったもの一つだけ。貴方の会社には盗むビジネスはないでしょうと抗議したが、受け容れられず共同作業は頓挫した。

 その間、仙台にも自費で行ったし、相変わらず顧問料はなし。時間と経費の無駄に終わり貸付金だけ残った。それは後で返してもらったが、どうもこの人は不可解な人だった。

 顧問を始めた当初から係争があり、私は弁護士を紹介したが、私の目には相手の主張していることの方が正しそうに思えた。だが和解をして紛争は解決した。

 その人との関係は実りなく終わってしまったと思ったが、何を考えたのか6か月ほどしてから、お中元、お歳暮が届くようになった。どうも私との関係では自分にも非があると思ったと想像したので、私は断らずに長年に亘ってこのお中元、お歳暮をもらい続けた。

 お中元は決まってワインであった。当時私はワインを飲まなかったので、誰かに上げたと記憶している。だが折角もらったワインなので一度自分で飲んでみようとキープした。

 ワインには「誰々の手によるこのワインは豊穣な香りと奥深い味わいがあり、円やかで舌には刺さらない」などと高級そうな説明文が彼によって書かれて添えられていた。私は期待して飲んだのだが、どうも美味しくない。不思議に思って購入価格を調べてみると1250円であった。

 もちろん貰い物にけちを付けてはいけないが、そんなものに麗々しく説明文を付ける人の精神を図りかねた。5,6年続いたワインの贈り物を他人に試飲もせず上げたことに恥じたがもう遅い。

 その人には私の弁護士や税理士も紹介したが、その人たちとは長く付き合っていたらしい。だがある日税理士突然仕事を断られたと報告があった。理由は分からないらしい。その税理士さんは人柄も優れ実力も相当ある人だったので、紹介したのだが、結局相手から理由の説明もなく、一方的に断られたようだ。

 弁護士さんにその人の性格を尋ねるとやはり諍いが多すぎるとのことだった。その後何年かして街角でお会いした時にもう無駄な中元、歳暮にお金を使わなくても良いでしょうと、それらの受け取りを断った。

 その後会社はどこかと合併したと聞いた。その人はとてもルックスが良く学歴も最高で主婦にとてももてた人らしい。私は大学では何を教えているのか、虚業ならぬ虚学という感じがしてならない。今どうしておられるのやら。

酒巻 修平

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