今日の言葉
イソップ寓話より引用
343)狼と犬の戦争
犬と狼の間に敵意が生じた。アカイア地方の犬が大集団の将軍に選ばれたが、この犬は戦争巧者であったけれど、ぐずぐずと遷延するばかり。皆から、先導しないつもりか、戦いを起こさぬつもりか、と迫られて言うには、「聞いてくれ、何のために時を稼いでいるか、なぜ慎重に構えているかを。常に先慮が必要だ。敵は見たところ全員が同じ種族である。対して我々の方は、クレタから来た者もいれば、モロッシアとかアカルナニアから来た者もいる。かと思えばドロペス産もいるし、キュプロスやトラキアの出を誇る者もいて、要するに、ばらばらだ。我々の色も奴らと違って一つではない。黒や灰色や、褐色で胸に白い斑点のあるのや、真っ白などだ。さて、こんな不揃いな連中を指揮して、どうして何から何まで均一な奴らと戦わせられようか」
【引用元 岩波文庫 イソップ寓話集 著 イソップ 翻訳 中務哲朗】
リーダーの役割
アカイアの犬は戦いには強かったものの、チームをまとめる能力に欠けていたのでしょう。
これは現実社会のプロジェクトでもよく見られる寓話です。
前評判の高い人物がプロジェクトリーダーに就任すると、当初、メンバーたちは大きな期待を抱きます。
しかし、時が経ってもチームは一向にまとまらず、問題ばかりが山積みになっていくことがあります。
事態が深刻化すると、一部のプロジェクトリーダーは「他のメンバーに能力がない」などと責任転嫁し、自己保身に走ってしまいます。その結果、状況はさらに悪化の一途を辿ります。
リーダーも所詮は人間です。たとえ評判が高くても、自分の能力に見合わない役割を任されれば、期待通りのパフォーマンスを発揮できないものです。
そんなとき、プライドを捨てて、速やかにリーダー交代を申し出ることが必要です。
リーダーの本質的な役割とは、チームをまとめ上げることにあるのだから。
イソップ寓話集 の「狼と犬の戦争」を読んで、そんなことを感じました。