今日の言葉
イソップ寓話より引用
170)病人と医者
【引用元 岩波文庫 イソップ寓話集 著 イソップ 翻訳 中務哲朗】
人が医者から容態を訊かれ、異常に大汗をかいたと答えると、それは良い按配だと医者は言った。二度目に様子を問われ、悪寒がして震えがとまらないと答えると、それも良い按配だと医者は言う。 三度目、やって来て病状を尋ねるので、下痢になったと答えると、それまた良い按配だと言って、医者は帰って行った。 親戚の者が見舞いに来て、加減はと訊くので、言うには、「良い按配のお蔭でもう駄目だ」 このように多くの人が、自分では最も苦しんでいる正にそのことで、外からしか判断しない隣人によって幸せ者扱いされている。
権威を疑うこと
この寓話で病人が言う「良い按配のお蔭でもう駄目だ」というセリフは、医者を信じて言っているのか、それとも医者に対する皮肉なのかで、伝わる内容が大きく変わります。
結論として、自分が苦しいのに、外からしか判断しない人の意見が優先されると読み取れるため、このセリフは最後まで医者を信じていた発言だと感じます。
「自分が苦しいのに、外からしか判断しない人の意見が優先される」ことは、現代社会でもよく見られます。
例えば:
- 心がつらい時に上司に相談すると、「もっと頑張らないとダメだよ」と言われる。
- 心療内科に行くと、「それはうつ病です」とつらい心に病名がつけられる。
- その結果、自分はうつ病だから頑張れないと思い込んでしまう。
人に相談すれば、その人の価値観に基づいた答えが返ってきます。
特に、相談相手が役職者や権威ある人の場合、自分の考えよりも相手のアドバイスを信じがちです。
しかし、そのアドバイスを安易に信じると、自分自身を見失う危険があります。
大切なのは、権威の有無に関わらず、相手のアドバイスはアドバイスとして聞き、最終的には「自分が辛いのはなぜだろう?」と自問自答し、自分なりの答えを見つけることです。
寓話の病人も、医師を疑い、自分のしんどさと向き合えていれば、別の医師に相談するなど、違う選択ができたかもしれません。
イソップ寓話「病人と医者」を読んで、このような現代社会にも通じる教訓を感じました。