幸せなお米屋さん

 知っている人にお米屋さんがいる。

この人は少し知能が遅れていて、お

兄さんが経営する米屋で配達の仕事

をしている。

 この人は天気予報士とあだなが付いて

いるくらい、飲み屋で会うといつも今日

の天気を予報するのだが、それが必ず

当たるから不思議がられている。

 お米は車ではなくて、運搬車と称

する運搬用の大型の自転車で運ぶ。

 運ぶ地域にはもちろん坂があるのだが、

へいちゃらで息を切らしながら、すい

すいと登る。

 風邪を引いたことはない。その他の

病気もしたと聞いたこともない。

 しかし一度入院した。夜公園に寝て

いたホームレスに躓き、その拍子に足を

骨折したのだ。

 しかしそんな経験も彼に掛かると楽

しい思い出になるらしい。

 いつも何か面白いことを話している

ので、勤務に疲れた看護婦さんがその

人の看護をしているときはいつも笑う

らしい。

 その人は競馬が好きで小遣いがあれば

馬券を買うが、まず当たらない。当たった

ときは何か買ってきて飲み友達に配る

ので、すぐに配当金もなくなってしまう。

 だから兄嫁の紀子さんが、コントロール

して小遣いを渡してやっている。彼はそ

の紀子さんがけちだというが非難して

いる調子ではない。

 一度誰かに連れられて銀座のクラブへ

言ったことがある。クラブのホステスがその

彼をいたく気に入り、しばらく彼女の

マンションに出入りして、食事と彼女

の肉体をご馳走してもらったこともある。

 いつも会う飲み屋のご主人が胃潰瘍

になって柔らかいものしか食べれなく

なった。すると彼は毎日ヨーグルトを

届けて感謝された。それから彼はその

飲み屋が無料になってしまった。

 もちろん独身だが、不思議と女性の

獲得には不自由しない。それを相客が

不思議がって、彼に女性の獲得方法を

聞くと得意がって話す。

 簡単だという話の趣旨はひたすら尽く

すことだそうだ。そう言えば飲み屋の

ご主人も尽くされて飲み代をただにさせ

られた。

彼の店が買い上げられて移転したので、

もう会えなくなった。私も精神的に尽くされ

らしく、寂しくて仕方がない。

酒巻 修平

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