舟木一夫の悪役振り

  私は時代劇が好きである。今は「長七郎江戸日記」というのを見るのを毎日の楽しみにしている。

 これは主人公が現実に東京国立博物館に所蔵されている大般若長光という国宝に指定されている太刀を佩き、無類の剣豪振りで活躍する痛快時代劇である。

 原作は村上元三で、主人公里見浩太朗演じる松平長七郎が江戸の町に蔓延る悪を一人で退治する物語である。敵が何人いようが無類の剣豪であるので、群がる敵をひとりで全員退治する。筋があってないようなものだ。

 長七郎は徳川秀忠の子供で徳川忠長という高い身分の出の子供だ。父が三代将軍家光との将軍争いで破れ、自刃したので、下野したことになっている。この辺りはフィクションであるが、物語は大体史実に基づいている。

悪である敵方、味方、長七郎に心を寄せる女性などが織りなす決まりきった筋だ。クライマックスは仮の名の速水長三郎が悪者のところに着流しに現れ、そこに刺繍された葵のご紋を見て敵が驚くシーンである。

供の三宅宅兵衛が「えい、控えぃ! これにおわすは畏れ多くも上様(=徳川家光)の甥御様、松平長七郎長頼君なるぞ!」と一喝するところが痛快だ。

筋は決まり切っていて身分の高い人物が最終的には敵を皆殺しにして、目出度し目出度しで終わる。その決まりきった結末が酒を飲みながら見る私に安心感を与える。

ここからが本論だが、味方の蕎麦屋に扮した「三田明」の演技がとてもいいのだ。三田明は本来歌手だが、とぼけた味を巧に出していて、この三田明が劇を盛り上げている。

前に「舟木一夫」が無類の悪役を務めたやはり時代劇があったのだが、題名を忘れてしまった。もう一度見たいと思っている。舟木一夫は青春歌謡曲を歌っているが、その舟木一夫が一転悪役を演じていた。その悪役が見事なのだ。

私は歌手としてではなく、この悪役の舟木一夫のファンだ。何故大した劇の練習もしていないと思われる彼があんなに上手いのか驚くばかりだ。

歌謡曲は一曲2コーラスを歌うのに大体3分掛かる。だから歌は3分間のドラマと言われる。3分間の間に歌に込められた感情を表現しなければならないので、英語では「translator」即ち翻訳者とも呼ばれている。

翻訳者である歌手は作詞家、作曲家の意図する内容を3分間で表現するからそのように呼ばれているのだが、上手い歌手は3分間の劇をするのと変わりなく、演じ切る

三田明も舟木一夫も本当に芸達者だ。日ごろ歌うときに劇を演じているのだから、特別の練習をしなくても劇を演じ切れるのだろう。

舟木一夫が悪役を演じた時代劇の名前を知ろうとしているが、今に至るまで、分かっていない。何とかもう一度、舟木の悪役ぶりを見たい。

土曜日、日曜日は「長七郎江戸日記」がないので酒の相手がいなく、酒の美味さが落ちる。だから私は平日が好きだ。三田明、舟木一夫、頑張れ。

酒巻 修平

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