私の体験談 - ニューギニア 3

ニューギニア滞在中に勿論オーストラリア人との話合いがあった。当時私がいたニューブリテン島はオーストラリアの信託統治領で、オーストラリア人も沢山いた。

 現地人が驚くべき身体能力を有していたことは「・・・ 2」で述べたが、今日はオーストラリア人のことを書いてみたいと思う。

 私が親しくしていたトムソンという人がいた。当時カシオの計算機などはまだ世の中に存在していないので、私は出張にはもっぱら算盤を持っていった。もう4つ玉になっていた。

 彼はその算盤に非常な興味を示した。計算機がない時代私が魔法でも使っているのかという目で私が算盤を使っているのを見ている。私は算盤を正式に習ったこともないので、できるのは足し算と掛け算くらいで、引き算と割り算は相当苦労した。

 あまり熱心に見るので、私がやり方を教えてやろうかと申し出ると、是非お願いしたいと言うので、その日から練習が始まった。

 1を先ず置く。これは簡単だ。2は下の珠を二つ上に上げる。これも簡単だ。

4も同様。5になると上の珠を下に下げる。これも彼は覚えた。

 これからは足し算だ。1+2。できた。こんなの日本人からするとそんなことをいちいち何故教えるのかと言われるようなレベルだが、このオーストラリア人は危なっかしい。

 でも1+2はできた。次はその結果に3を足す。もう下の珠は一つしかない。だから3=5 -2だから5の珠を下げて加え、1の珠を二つ下げればいいと教える。

 これが難しいらしい。でも何日か繰返し教えているうちにできるようになった。次は4を加える。4=10-6で、6=1-4だ。だから4=10-1-5だ。ちょうど5の珠が入っているし、1もある。だから5と1をはらって、次の桁の1即ち10を足せばいいのだ。

 それは彼には大変難しい作業だった。10日間教えたが到頭覚えられなかった。というよりそのような思考はできなかった。私には根気が続かなくてまた今度教えてあげると言って、練習を中止した。

 でも彼はどうしてもその魔法の機械を使いこなしたいと言って時々習いにくる。私ごときができるのだから、自分だってできる筈だという信念に基づいているらしい。

 また私は根負けしないように1週間教え続ける。しかし結局彼は諦め、私も匙を投げた。日本人だと小学校4年生でもできる作業を彼はできなかった。

 こんなこともあった。現地駐在員はたばこを吸っていた。日本のたばこなど売っている訳がないから、美味しくないけれど仕方なく、オーストラリア製のたばこを購入している。あるとき店に立ち寄ってたばこを購入しようとした。

 車で毎日買いに来るのは面倒と思った彼は、そのたばこ10箱買いたいと言う。

店はオーストラリア人が経営していて、金勘定は必ずオーナーがやる。レジへたばこ10箱入り1ケースを持って行って、勘定をしてもらう。

 1箱1.2オーストラリアドルだから1ケース12ドルだ。ここまで読んだ人は当たり前だと思うだろう。しかしオーナーは何やら掛け算をしている。7.5ドルだと言う。

 そうかと言って7.5ドルを払えばそれで終わりだが、本当の金額を知っている正直な日本人は違うと言う。どこが違うのかという問いにもっと高いよと親切に言ってやるともう一度考え直し始めた。

 ここでもっと安い筈だと言えば7.5ドルだとごり押しするのだろうが、こちらはもっと高いと言っている。そうすると得をしたことのなり、また真剣に考え直すのだ。

 そこでオーナーはレジスターの前で盛んに何か考えている。5分くらいも経過した。どうも今まで一度に10箱も買う人がいなかったからか、計算ができない。どこができないか分からない。1.2ドルの点の処理ができないのか、オーナーの頭の中は分からない。

 5分くらい経過したのち、そのオーナーは1.2を10回レジスアーで入力した。即ち1.2+1.2+1.2・・・を10回やったのだ。これにはたばこを買いに来た人と私は目を見合わせた。

明日に続く

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酒巻 修平

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