日本人との馬鹿騒ぎ - 下駄ばきでダンス

学校を卒業して入社した当初のころ、部長、課長、私と、私より少し後から入った新入社員の4人でキャバレーに行った時のことです。

 当時は日本の高度成長の時期で、キャバレーに遊びにいく男が沢山いました。だから入場するのに30分くらい掛かるのが常識のようになっていました。

 列にならんでいると部長が私に下駄を4足買ってこいと命令をするのです。私は下駄などどこに売っているのか分からないので家が近所にある後輩についていってもらうことにしました。

 安物の下駄でいいと言われていたので、一足300円のものを4足買って、少し進んだ列に並んでいる部長に渡しました。部長は私に持っておれと命令します。

 下駄をどうするのかという私の質問に部長は答えず、何でもいい、後で言うと目的を話しません。

 やっと入場して席に座ると部長は「今日はセット以外に何も頼んではいけない」と我々に釘を刺しました。セットとはビール一本と簡単なおつまみだけです。

 すぐにホステスが席にやってきて、挨拶の後ビールを注いでくれました。我々はセット以外注文してはいけないと厳命されていたので、ビールの飲み方もちびちびです。

 ホステスはそれでは売上が上がらないから、盛んにビールを飲まそうと継ぎ足しに掛かります。でもいや、もう大分飲んできたからあまり勧めないでとか適当なことを言って、なかなかコップを干しません。

 部長が隣に座っている課長にこっそり何か耳打ちをしました。この課長は真面目な人で、部長の言ってことに顔を顰めて「本当にやるんですか」と言っています。何だか気に掛かりました。

 私が預かっていた4足の下駄を課長は皆にわけて、我々は下駄を履きました。

客一人にホステスが一人ずつ付いているので、そのホステスを誘いダンスをしようという訳です。

 フロアーに出て4人がダンスを始めるとステップを踏むたびに「かちゃ、かちゃ」と音がします。4人分の音がするので回りのお客さんもこちらを見ます。音は足元からしているので、足を見るのです。

 暫くダンスをしているとマネージャーと思しき人がクレームに来ました。「お客様、下駄でダンスは困ります」と文句を付けると部長は「そんなことはどこにも書いていないぞ。俺たちは下駄でダンスをしたいのだ」、そんな無茶なことを言ってマネージャーを困らせています。

 そんな馬鹿なことを暫くしてから席に戻るとむっつりとしたホステスがまたビールを注ごうとします。もうビールは無くなったので、ビールを追加しますかと尋ねました。

 部長はいやもういい。あのマネージャーは感じが悪いからもう帰ると言います。感じが悪いのは我々ではないかと私は思いましたが、新入社員はそんなことを言えません。

 ワンセットは650円でしたので、650x4=2,600円支払うとお金を受取ったホステスは渋い顔でレジに勘定しに行って400円のおつりを持って帰ってきました。

 もう早く帰ってくれという態度のホステス達に部長は一人1000円ずつチップを払うと4人のホステスは急に笑い出して、お客さん冗談だったのですね。また来てねと相好を崩しました。

 新入社員の「真夏の夜の夢」でした。

酒巻 修平

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