口呼吸の利点

 最近の子供たちが口呼吸をしているとして、鼻呼吸をするよう勧める人が多い。しかし勧めている人たちは口呼吸と鼻呼吸のことを知っているのだろうか、疑問に思う。昔アメリカの「エポック先生の育児書」というのがあったが、そんなことにはならないのかと心配である。

 エポック氏は生半可な考え方か、単に本を売るためにこんなことを書いたのだろうが、それが大きな悲劇の元となった。曰く赤ん坊は下向けに寝かせるのがいいと。それで何人の赤ん坊が亡くなったか。

 同様に鼻呼吸を奨励する人は鼻呼吸と口呼吸の意義を弁えているのだろうか。人の全ての機構を知るのは並大抵のことではない。医者には風邪をひかない人が多いが、精神的な作用だとするだけで、その詳しい機序は解き明かされていない。

 話は元に戻るが、人以外の動物は口呼吸をしない。一度飼い犬に海苔を与えたことがあった。妻が飛んで来て犬が喉を詰まらせて死んだらどうするんだと私に強く抗議した。私は犬が口呼吸をしないことを知っていたので、笑って済ませてが、大体普通は犬も人と同様に口でも呼吸すると思っている。

 人は他の動物と同じだと考えては良くない。生物は植物、動物、人と三種類に別けられると考える方が無難だ。人は他の動物とは全く違う進化をしたのだ。

 横隔膜は体で一番大きな筋肉だ。これで下の臓器を下がらないように支えているし、肺や心臓は上がらないように引っ張っている。老化してその筋肉が衰えると内臓が下垂し、肺、心臓が上がる。無駄に口で呼吸ができるようになっているのではない。

 さてスポーツ選手は鼻呼吸をしているだろうか。スポーツ番組を見えればわかる通り口で息をしている。口呼吸は早く大量に空気を吸うのに役立つ。

 鼻で呼吸をすると肺と心臓が上がってしまう。横隔膜より下は下がっては良くないし、上は上がってはいけない。舞台などで上がると言うのは肺が上がり呼吸もままならないし、平常心を欠くことにである。その点、口呼吸は肺が上がらない。

 だから心臓病の発作が来たときは口呼吸をしながら、素早く薬を服用するのがいい。口を大きく開けて空気を吸うのだ。

 私は喘息で不整脈の持病を持っている。だから坂を登るのが大変だ。坂を登るときやちょっと走るときは口呼吸をする。効率の良い口呼吸の方法があるが、それは論旨ではないので、割愛する。

 口呼吸は早く大量の空気を肺に送り込むためには欠かせない技法である。吹奏楽器の循環呼吸の技法は鼻で空気を吸い、口から出して音をとぎらせない方法だ。

口で呼吸をするのは声を出すためと発生学者は言うが、本当にそうだろうか。もっと違う利点もあるように思う。

 歌を歌うときは鼻から空気を吸う。今の歌手はこれができない。テレビで見ていると可哀そうなくらい息継ぎに苦労をしている。鼻呼吸を歌唱の時にするのはそれなりの訓練が必要なのだ。口呼吸は音程を狂わすのでやってはならない。

 有名なマリアカラスも口で息をしていた。オペラを歌うときの息継ぎは素早くやらなければならないから、どうしても口呼吸になる。男性歌手のように鼻で息を素早くすることが簡単にはできない。彼女が歌っているときの呼吸音は耳障りだ。

 吹奏楽器の演奏では循環呼吸と言って、音を途切れさせずに続かせる技法がある。これは鼻で空気を吸い、口で出すことによって音が途切れないようにする方法だ。

歌には循環呼吸の技法を用いることができないが、この技法の一部を利用して鼻で息を吸い、口から吐くようにすれば発声が改善する。

 遠泳をしている時も口で吸い、鼻で吐くのが楽だ。私は専門家ではないので、この方法は異端かも知れないが、私には楽な泳法だった。

 口で呼吸をすれば吸い込む細菌の量も制限できるし、入って来た空気も暖められるだろう。空気が肺の奥まで行きわたるだろう。しかし鼻にはアレルギーの元になるアレルゲンを感知する機能があるので、私はあまり鼻呼吸をしない。口呼吸も時と場合には役に立つことを覚えておいて欲しい。

 情報は氾濫している。流行りのやり方を早速試すのは考え物だ。情報の質の良し悪しが極端で、どの情報を自分のものにすればいいのか迷う。

酒巻 修平

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です