あるものとないもの

今日の言葉

菜根譚より引用

前段67）真の楽しみと憂い
世間の人は、名声や地位を得ることが無上の楽しみであると思っているが、名声も地位もない境遇におる者の楽しみこそ、人生最上の楽しみであり最高の幸せであることを知っていない。なお、世間の人は、飢えこごえるような貧困の生活は、実に苦痛であり不幸であると思っているが、飢えここえることのない富貴の境遇におる者の方が、更に一層深対な悩みを背負っていることを知らない。

【引用元 講談社 菜根譚　著 久須本文雄】

あるものとないもの

紙を1枚用意して、「いま欲しいもの・いま足りないもの」と「すでにあるもの」を書き出したとき、どちらの方が多くの項目を書けるだろうか。

おそらく「欲しいもの・足りないもの」の方が多く書き出せるだろう。

その理由は、人間は「あるもの」よりも「ないもの」の方に意識が向きやすいからだ。

例えば、「お金がない」や「幸せがない」と思うことはあっても、「衣食住がある」「平和である」とは普段意識しない。

戦争に巻き込まれるなど、いまある物事を失ったときにはじめて、「衣食住」や「平和」があることが「幸せ」だったと気づくのかもしれない。

人間は何かを失って初めて、その大切さに気づくものなのかもしれない。

しかし、失ってから大切さに気づくのでは遅すぎる。

だからこそ、平時から「いまあるもの」にも意識を向けることが大切だ。

高級料理を食べて幸せを感じるよりも、普通のご飯を食べて幸せを感じられる方が、幸せは持続するものだと思う。

ないものを追い求めるよりも、いまあるものに気づくことの方が、人生をより幸せにするのではないだろうか。

菜根譚前段「真の楽しみと憂い」を読んで、そう感じました。

オススメの本

※ブログで紹介した久須本文雄著の『菜根譚』は絶版のため、岩波文庫の菜根譚のリンクとなります。