経営講座 -仕入れー その2

仕入れをする場合に話し合わなければならない大切なことは幾つかありますが、中でも価格と支払い条件は最重要項目です。価格が低かったり支払い条件がこちら有利だったりすると相手方には不利です。当たり前のことですが、この点が論理的に考察されないことが多いのです。

 こちらが相手方より信用度が高い会社の場合は相手の提示する価格、支払い条件を黙って聞いていると良いでしょう。しかしその反対の場合は支払い条件に関してはこちらから提示しましょう。

 その場合自己の定例の支払い条件をさらっと何でもないように言うのです。変に硬い態度や言葉を使うと相手は反対条件を出してきたりします。ここは一種の呼吸のようなものです。もしこちらの支払い条件を先方が呑まない場合、暫く仕入れをして約束通り支払いをすると支払い条件を改定するチャンスが来ます。その時は必ず自己の定例の支払い条件を受諾してもらうよう努力するのです。大体思う通りになります。

 ある商品を取り扱っている会社はまず一社ではないでしょう。相手の会社にも競合先がある筈で、そことの仕入れ条件を比較しながら、現仕入れ先と交渉することになります。しかしあまり小さな金額しか仕入れをしないときは交渉すると却って逆効果になる場合があります。

 私がまだ20歳台の後半のころ、勤めていた会社は輸入商社でしたが、私が輸入の実務を担当していました。社長さんは小さい気性の持ち主で、仕入れをするときは同じ商品を必ず2社以上から仕入れろと命令します。

 輸入する商品には保険を掛けます。勿論契約上こちらの港までは輸入先の責任範囲になるのですが、万一事故が起こったときなかなか保障をしてくれません。そんな時の場合を想定して相手の倉庫からこちらの倉庫までの損害の発生の可能性に対して保険を掛けるのです。

 この保険の料率(保険金額=insurance amountに対する保険料の割合=premium)は0.3%とかで金額はそう大きくありません。ある時保険会社(大会社)の担当者が用事で我が社にやってきました。その時の要件は確か保険料率の改定だったと思うのですが、社長が横から「保険会社はもう一社持ったらどうだ」くらいのことを言うので、私は「金額が小さ過ぎますので2社も入れると相手さんがやる気をなくします」と言って社長の意見を容れませんでした。

 因みにこの社長の命令は越権行為です。私に貿易実務の全責任を取らせていたので、こんな小さなことには口を出してはいけないのです。そのころは私も入社して長くは経っていなかったので、きつくは言わなかったのですが、こんな言動を社長が取ると社員のやる気を失くすのです。

 そんな社長と私の会話を聞いていた保険会社の担当者はその後何かのトラブルで保険の適用をしなければならなかったときに会社と交渉をして、こちらの有利になるように計らってくれました。

 仕入れ相手がこちらより数段格上の会社は時々無理あるいは無法な要求をしてくることがあります。こんな場合は仕方がないので、その仕入れ先の同業他社との取引を検討しなければならないことになります。もしそんな会社がない場合は耐えるか、あるいは私ならその商品を扱い商品から削除します。

10年か15年くらい前まではビール業界の最大手はMビールでした。ところがこのMビールが自分たちの地位を鼻に掛けて顧客に横暴な要求ばかりして、とうとうAビールにその最大手の地位を奪われました。後悔したMビールはそれから腰を低くして無理な要求をしなくなりましたが、後の祭りでした。今は業界1位の座を巡って熾烈な競争をしています。

 通販の最大手のRも同様で、その会社運営の仕方は自分勝手で、私はいつも苦々しく思っていました。ところがA社が日本でも台頭してきたので、これ幸いと乗り換えました。A社は素晴らしい会社で、業績を伸ばし、Yは通販部門ではじり貧です。

 仕入れをする場合も誠意を持って当たらなくてはなりません。一時的には表面上損をする場合があるのですが、長い目でみるとその誠意が会社のアイデンティティとなって会社の信用が増す筈です。

 再度述べます。仕入れは会社運営の最重要課題です。絶えず社長が監視しなければなりません。

酒巻 修平

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