朝の使い方

 昔ラジオ歌謡に「朝はどこから来るかしら」というのがあった。我々が生きている地球は自転し、太陽の周りを公転している。だから太陽との角度で朝、昼、夜と時間が変わっていく。

 人を含む生物に太陽ほど大きな影響を与えた事物はないだろう。太陽の核融合による熱や光がなければ生物は誕生していないし、人という高等生物は存在し得ないだろう。

 その偉大な力が夜には薄れ、朝には復活する。夜は睡眠を伴う休息や新陳代謝、生殖の時間であるのに対して、昼は生物として活動する時間だ。だが朝の人に対する役割はあまりはっきりしない。

 実は朝には大変重要な役割がある。それは休息や新陳代謝を終えた体が新しい力を得、脳や身体が一番働く時間である。労働は朝に効率が良く、昼を過ぎると体力も減衰してくる。

 従って心身ともに大きな仕事をするのは朝に限る。卑近な話しとして視力を取り挙げてみよう。ご存知運転免許は裸眼でも眼鏡を掛けていても視力が0.7以上ないと与えられない。

 私もそのぎりぎりのラインにいるので、何か方策を考えなければならない。思い付いたのが朝一番に警察へ行って、視力検査をしてもらうことだった。

 夜は視力が0.6以下であるのに対して、朝はだいたい0.8くらいある。今回も簡単に検査が通った。休息後の目は能力を大きく発揮したのだ。

 これ以外にも例えば重い物を持たなければならない時は朝にするに限る。朝に労働するのが一番効率は良いのだ。

 ほとんどの花が朝に咲く。朝顔はその現象を取って名付けられた。気象もそうだ。カナダのバンフスキー場では夜に降った雪が朝には止み、スキーヤーは新雪の上を滑ることができる。

 「東の 野にかぎろいの 立つ見えて 返り見すれば 月傾ぶきぬ」という柿本人麻呂の歌もあるように、夜の愛や休息の後の新しい一日が朝に始まる。夜は爛熟、朝は新鮮という言葉も当てはまるかも知れない。

 忘れてはならないのは脳も体の一部であるということだ。脳も朝には一番活躍する。試しに朝起きたての時に何か難題の解決方法を探ってみよう。素晴らしいアイデアが浮かぶだろう。

 布団やベッドで朝目を覚ます。すぐに起き上がらないで、しばらくは妄想に耽ってはどうだろうか。仕事に関すること、友人との交友関係の改善、誕生日祝いの選び方、そんな全てのことに朝良い考えが浮ぶだろう。

 ニュートンが万有引力を思い付いたのも朝だったし、アインシュタインもベッドで相対性理論の骨組みを組み立てたのも朝だったに違いない。

 夢は取得した情報を整理する時に発生した出来事で、夢を見た後には脳は整理整頓されている。新しい情報を取得する舞台が整うのだ。

 紛失した物の在り処を思い出すかも知れない。就職活動、婚活、それに対する答えが出て来るのも朝のベッドの上だろう。

 朝には優しい気持ちが生れる。憎悪、嫉妬、復讐、倦怠感、闘争心、挫折、失意。そんなものは朝にはないだろう。もしそんなことがあればそれは真に解決しなければならない。すぐに行動しよう。

 あるいは誰かに対する悪意があるとすれば、朝考え直してみれば良いだろう。朝はそんな時間なのだ。死、誕生、病気、そんなものは夜の仕事だ。朝はそれらを乗り越え、発生しなかった後にやってくる。あなたは一日また新しい生と生活を得ることができたのだ。

 朝の目覚めの30分、1時間をベッドの中で考えながら過ごす。良い考え、思い付き、発明がやってくる筈だ。昨日やり損ねたことも思い出すだろう。悪意は去り、改善に向かって進む端緒になる。

 体の中から湧き出る音、宇宙の彼方からの光、地球の重力を感じるのも朝だ。それらはあなたに何かを感じさせるだろう。

 考える努力をしなくてもじっと静かな時間を過ごせば良い。そんな時間はあなたに何かをもたらすだろう。

酒巻 修平

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