経営講座 -営業マンー その3

 前に住んでいた家の近所にはやっている医院があった。理由は1月1日以外休診日なしだからだ。腕は良いとは言えないが、悪くもない。どうせ医者は症状を治すだけで病気の完治はできない。そう思って軽い病気のときはそこに行くことにしていた。

 非常にはやっている医院だから待ち時間が長いし、予約制をとっていない。携帯電話の番号を教えておくと診察時間が近づくと知らせてくれる。医者が親切なものだから、看護士、受付、全ての人が患者のことを考えて対応してくれる。

 紹介状も東京大学附属病院、癌研、どこでも気軽に只で書いてくれる。患者の話は熱心に聞くし、勉強もしている。医者としての道徳と職務に極めて忠実で、私はこんな人も現代社会にまだ存在していたのだと、感心をしていた。

 しかしどうにも解せないので、あるときカイロプラクティックの施術士に聞いてみた。そうすると帰ってきた答えは意外なものだった。仕事が好きなのだそうだ。因みに自分の同業の父親もやはり1月1日しか休診しないと付け加えた。

 それで解せた。義務感や誠実心だけではほぼ無休では仕事をすることはできない。好きだからできることなのだ。それが答えだとすると営業マンの行動思考が理解できる。営業が好きな人を営業マンにすればいい。むりやり営業をしろと言っても成果は上がらないのではないか。それにやはり誠実さも必要だろうとその医者を思い浮かべては採用方針を修正する。

 本田技研工業の創始者の本田宗一郎氏がこんなことを言っていた。直接聞いた訳ではないので、テレビか雑誌の取材で答えたことだろうと思う。購買担当は3年やると家が一軒買うことができるほどのリベートを手にすることができる。

そしてそれは必要悪だと。

 会社経営は簡単ではない。交通費の水増し、自分一人だけでいく酒場の領収書の請求。いくらでもある。しかしこれを全部禁止すると融通が利かない会社になってしまう。大会社では流石に今はなくなったらしいが、それでもときどき女性を連れてきて会社に請求する人もいる。社長ではない。

 だから交際費を月に5万円と設定しておくと5万円きっちり使う。残しはしない。馴染みの飲み屋で水増しの領収書を書いてもらっているか、どうしてもそんな小さな「ずる」をしたくなるのが、営業マンらしい。その良し悪しの判断は会社の経営者に委ねられるが、本田技研工業でもそうなら、小さな会社では止めることができないだろう。

 最近は女性が社会に進出して責任のある部門を任されていることも多い。女性も会社の人材だからできるだけ働いてもらいたい。しかし女性は男性と違う。長所もあれば短所もある。ある営業マンに聞いたことだが、女性の購買係は好みの男性(ハンサムという理由だけではない)に購買を集中することがある。勿論全部ではなく一部だが、仕事ができる女性に多いらしい。

 韓国へ一緒に出張にいくとエステ代を出させ、それを購買金額に上乗せする。会社は余計な金を払っているのだが、その女性購買掛かりがそれを禁止されたと聞かない。男性の購買担当も同様の傾向があるが、女性はそれが強い。営業マンはそこに付け込む。

 人の性は善か悪か。性善説と性悪説がある。これほど不毛な議論を私は知らない。人は両親から生まれ、二面性があるのが当然だ。だれでも善と悪の性格を併せ持っている。悪を禁止すると善もなくならないか。考えても無駄なような気がする。

 社長も接待ではない飲食費を会社に請求する。会社と個人は違う筈なので、これは許される行為ではない。しかしほとんどの社長はやる。社長がやるのに、社員に禁止できるのか、アメリカなどの国連常任理事国が保有している原爆を他国が保有するのを禁止するのと同列でどうも得手勝手の感が強い。

 営業マンは感だけで仕事をする傾向が強い。もう少し考えたらもっと効率の良い方法も見つかる筈だが、そんなことはしない。今はパワーポイントで作った商品の購入による経費節減案などを持ってきたりするが、それも自分で考えたことではない。今の社会の無駄な要請でしかない。

 この間家の結露防止ガラスの購入を検討して、営業マンに来てもらった。大会社の営業マンは優秀かと思ったが非常に無能だった。商品の値段は即答できないし、見積もりを出すと言っているのにいつまで経ってもそれはこない。もう大会社から商品を買うのを止めようと思う。

酒巻 修平

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