経営講座 -人事ー その5

社員は教育しないと伸びないと言う人がいました。人は教育しても駄目だというのが私の意見でしたので、いつもその人とは議論をしていました。解析すると教育とは何でしょうか。それは学校で教える勉強のようなものでしょうか。それとももっと違うものでしょうか。

 会社の仕事の内容はそのうち覚えます。商品についても、会社の機構についても覚えればそれで終わりです。そうすると何を持って教育とするのでしょうか。

 ですから私は教育より素質がなければ駄目だ。素質のある人を採用したいとその人とは誰を採用するかでも意見が食い違いました。素質があればどのようにでも仕事をさせ、優秀になって行くと私は考えました。

 会社には有名な国立大学や偏差値が極めて高い大学を卒業した人が入社してきましたが、その人たちは誰一人として仕事においては優秀ではありませんでした。

サラリーマンをしていた時代、さる大手の銀行の支店長経験者が採用されて入社してきたことがありました。私はどういう訳かその人の要求していることが理解できました。会社にはシステムが大切である。そのシステムに則って仕事をして欲しい。そんなことを要求しているように思えましたが、その人は自分の要求を分析できていないようでした。ですから会社ではその人は無能でした。

 結局その人は2,3年で会社を退職しました。それと同様に話をよく聞きます。大会社の部長をしていた。役員だった。そんな触れ込みで小さな中小企業とも言えないような会社に入社した人がその会社で活躍したという話は聞いたことがありません。

 大会社では教育をしていると思われます。しかし受けた教育とは何であったのか、それは会社の運営システムを覚え、そのシステムに則る方法を記憶させるものであると私は考えました。

 一番優秀だと言われている国立大学を卒業して3回も外交官試験に落ちた人を採用したことがあります。私にもまだ優秀大学の卒業生は頭が良いと思っていたころです。その人にはこんなことがありました。

 その人がどこか仕入れ先に何かを依頼したときのことです。私はその結果を知りたかったので、その人にどうなったかを問いました。もう1週間も経っているのでぼちぼち回答が来ても良いころだと考えたのです。

 どうしたのだとその人に聞くと「すぐ返事をすると約束したので必ず返事は来ます。もう少し待って下さい」。そう言うので「何回か催促したのか」と問い返してみると「いや催促はしていないが、約束したので返事は必ず来ます」。同じことを繰り返すので、業を煮やした私は「それは忘れているな。聞いてみたら」。そんな問答があって、その人は相手に電話を掛けました。

 結果、相手は忘れていたのが判明しました。その人は大層立腹して「馬鹿野郎」と怒鳴りました。その人は約束を守る人だったので、自分を基準にものを考えたのでしょう。そんなことがいつも発生していました。事実は読めても人の心が読めないのです。

 その人は子供のころ大変頭が良かったのでしょう。それを嘱望されて、超一流の国立大学に入学しました。ところが受験勉強は記憶を旨としての勉強ばっかりだったので、考えることを全くしなかったと推定しました。

 私の学友はほぼ全員が東証一部に上場している大企業に就職しました。私は家庭事情があって、小さな会社に入社しましたが、そのころ殆どの学友は私より頭が良いと思っていました。

 それから何十年か経って同窓会などで会ってみると全員駄目でした。ものを教え込まれることばかり経験して頭が全く動かないのです。人の一番大切なことは考えるという事です。受験勉強ばかりした今の若い人がほとんどものを考えないということは恐ろしいことです。

 今、私は会社において教育は素質より大切なことと考え、教育論者です。ものを考えることを教育すると長い期間を要しますが、必ず良い結果が出ます。

最近入学試験に対する考え方を政府は変えたようです。そこでは思考が重要視され、今後は思考をする勉強を学校でも教えるようになでしょう。大変結構だと思っています。

酒巻 修平

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