読書感想文
一念発起、この年になって本を読むことにした。今までも本は読んでいたが、全て欧米のノンフィクション、翻訳本だった。若いころにはそれでも教養のためにと日本の文豪の作品には接してはいた。今回はそのリバイバルというかリベンジの意味もあった。
読書の意義は自分なり考えたが、今回の読書はその意義を変えてしまった。読み方が変わった所為もあるが、自分が年取って頭脳の能力が変化したことが大きいと思っている。
だいたい3冊ほどを同時に読んでいる。今続けているのは「ある外交官が見た明治維新」上下2巻である。この本は第三者的に幕末と明治維新の日本と日本人を書いたもので面白い。
先ずその本のことから始める
「ある外交官が見た明治維新」アーネスト サトウ著
訳文であるから、原文の英語の文章はどのようであるかは推測の域を脱しないが、著者は語学を勉強した人で、文章は上手い -と思われる-
最近日本人は恥を知らず、テレビでは自画自賛番組が多い。しかしこの本を読むと日本人に関する考えを改めさせられる。当時の日本は貧しく、ほとんどの人が貧乏人であった。ある人たちは誠実だが、ある人たちは嘘つきである。フィクションではないので、これは事実だと思われる。
特筆すべきことは政治家のことだ。彼らは責任を取らない、仕事はしない、そして決断力がない。例外的に優秀な人がいるが、これも現状と同様、身につまされる。
このころも外交が下手だったが、それも変わっていない。一つにはキリスト教的な考え方が分かっていないのと、背の高さが違うことが原因だと考えている。
同時に当時の欧米人の日本人に対する接し方にも腹が立つ。原因はこの何百年か世界を制御していたのは彼らだからだ。ただ彼らは正直だ。これはとてもいいことで、日本人は模範としなければならないだろう。それと問いにはきっちり答える習慣があるのも好ましい。
「瘋癲老人日記」谷崎潤一郎著
兎に角天才の書である。文章は完璧で、書いてある内容も深い。この人がノーベル賞を獲得できなかったのは、ノーベル賞の権威を落とすものだと思われる。日本語をスエーデン語に翻訳するのは無理。それを何とか翻訳して受賞の審査をするのだが、審査員の能力も低い。
「黒猫」エドガー・アラン・ポー著
更に天分が高い人が心理、情景描写をする。今もって通用する書である。
「そして誰もいなくなった」アガサクリスティー著
私でも書けると思った。今は数々のミステリーが書かれているので、もう古い。読む価値はないと判断した。エラリー・クイーン著、「Xの悲劇」も同様。
「種の起源」チャールズ・ダーウイン著
この本は進化に関して自分の考えを纏めたものだ。これは進化論と言うが、数々の反論のうち-今西勤司著「私の進化論」が日本にある。しかし私は「種の起源」に軍配を上げる。
「種の起源」の数々の解説書はダーウインが言わんとしていることが正確に伝えていない。ダーウインは研究、思考を重ね、その時の自分の考えを述べているが、その扱いを学者たちが間違っているように思える。
ダーウインも今西も論じていることは全て仮説で、その証明はされていないし、私の私論ではどちらも間違っていると思う。人の制御機構が解明されていない段階でどうしてその上流の機構である進化が語られるのか、学者の学問態度は疑問である。
「風の影」カルロス・ルイス・サフォン著
読み応えがあった。エドガー・アラン・ポーは自分の作品はミステリーではないと言っているが、これを読めば現代のミステリーがどのようなものであるかが分かる。
「ダ・ヴィンチ・コード」ダン・ブラウン著
がっかりさせられた。映画の方が面白い。
次項に続く
酒巻 修平