医者の掛かりかた
病気とは体の機能の不具合で、症状はその発現状態です。病気と症状は原因と結果の関係と考えて良いでしょう。病気は体のトラブルです。
病気は一種のトラブルですからその解消は原因の究明から始まります。しかし現在真の原因が分かっている病気はありません。
比較的原因が解明されている病気もあるので、この病気は根治することができます。病原菌による病気と骨折などの体幹の故障などです。例えば肺炎の原因は病原菌で、肺炎を治療するには肺炎菌を除去するという方法が取られます。
そもそも人の体がどのようにして動いているかは実際のところ分かっていません。脳の機能がどのように働くか、デジタル的アナログ的機序が分かっていないからです。アナログ的な機序に付いては研究されていますが、デジタル的なことはなおざりにされています。
腎炎などは原因の分からない病気なので、この病気は治癒することができません。一般的に症状は比較的原因が分かっているので、症状は一時的であれ消滅あるいは軽減させることはできるでしょう。
医師は研究者ではありません。今分かっていることを元に患者の症状(一部病気)を消滅あるいは軽減するのが役目です。
この目的に沿って患者は医師に症状即ちトラブルの状況をできる限り正確に伝えなければなりません。私には不整脈があります。先ず、心臓がおかしいという情報を医師に伝えます。それを元にその状態を検査機などで知見します。
しかしこの病気は医師の手では治りません。そのところへその症状からくるやっかいな病気が予見できます。それは脳梗塞になる確率が高くなるということです。不整脈が原因で発症する脳梗塞はその梗塞の元になる血の塊が大きいので、命を奪うことがままあります。
野球の長嶋茂雄、高円宮、あるいは元総理大臣の小渕恵三氏などがこれにやられました。かれらは予備的処置をしていなかったと思われます。
この症状のため激しい運動はできないし、ちょっとした坂道、階段を上ることも苦痛です。脈拍が早くなりすぎることもあり、これを長期に放置すると心不全になる可能性が高いのです。心臓の違和感、脳梗塞、心不全。やっかいです。
予備的措置の目的の第一は血が固まるのを防ぐことです。それには薬を用いますが、ある薬(ワーファリンなど)には抗甲状腺機能という副作用(この副作用はネットには出ていませんね)があるのでこれを注意しなければなりません。
抗とは阻害するという意味ですが、この薬を飲むと甲状腺の機能が抑えられる、即ち、脈拍の速度が遅くなるのです。これでは体が要求する血が足りません。ちょっとした運動をしても心臓に不整脈とは原因が違う別の不快感があります。
そこで薬を変えてもらいました。その薬には抗甲状腺機能がないので、心臓の不快感はなくなりましたが、脈拍が90前後から本来の110回くらいに戻りました。110回/分では心臓が働き過ぎです。今度は心不全になる可能性が出てきます。
早すぎる脈拍と心臓の不快感。矛盾する二つの現象を消滅する方法はあるのでしょうか。医師と共に考えています。しかし医学的には方法はないでしょう。
私の医師はワーファリンの副作用―抗甲状腺機能―を把握していませんでした。新しい薬を服用すると脈拍が早くなっているというのもチェックできていないし、病院で取る心電図の時間が10秒というのにも気が付いていませんでした。
薬の副作用や自らの病院の心電図の時間は知っていなければならないでしょうが、毎日2,30人の患者を診るのだから、一人の患者の症状やその原因を全て把握するのは不可能です。
このように患者自身が自身の病気を取り巻く状況を把握し、医師に情報として伝えなくてはならないのです。できますか。これは大変なことだと思います。でもやらなければ医師は良い仕事ができません。
医師は原因が分かっていないトラブルの解消を求められている大変な職業なのです。
酒巻 修平