パン

 小学生のときパンがあったかどうかは記憶にないが、少なくても家では食べなかった。でも中学校に上がるころアメリカの進駐軍がそれを持ち込んだ。

 それを日本のどこかが真似をして作った。ところが日本のパンは黒くてまずかったのを覚えている。私たちは白い進駐軍のパンを美味しいと思った。

 今考えるとそれは何等かの食品添加剤を使用したのだと思えるのだが、何とか工面してその美味しい進駐軍のパンを買ったものだった。

 それから日本のお家芸で、味を改良して今に至るのだが、私にはパンのアレルギーがある。

 一か月ほど毎日食べると体のあちこちの皮膚に蕁麻疹ができて、痒くて仕方がない。それでパンを止めるとまた一か月ほどで自然に治るのだ。

 パンが好きなので、色々とアレルギーの検査をした。小麦、イースト菌、卵その他忘れたけれど、思いつく材料に付いては全て検査した。しかしアレルギー反応は出なかった。

 最近主治医を変えた。その医師は有能な人で、私の話を聞いて、「一か月食べ続けると蕁麻疹が出るのはアレルギー反応ではない。それは食品添加物の所為だろう」と言う。

 なるほどと思った。論理的に考えるとパンに含まれる材料にアレルギーを起こすなら、食べたらすぐに反応が出る筈である。 

 テレビでもどこかの本でもパンは食べたらいけない食品であると言っている。私はそんな言い分を馬鹿にしていたから、そんなことには反応しなかった。

 しかし私は身をもって体験してしまった。世間で言っていることも満更出鱈目ではないのだと悟った。パンは確かに食べたらいけない食品であるようだ。その中の何が有害なのだろうか。

 勿論私のように過剰反応しない人が大半であろうが、しかし少なくても私には良くない食品である。

 私の友人がパン屋さんを開こうとして今パン工場で修行中だ。周りは女性ばかりだそうだが、新人の彼は手が遅くて要領が悪いからいつも叱られ、馬鹿にされているらしい。

 その彼がパン屋さんを開店すれば私は買いに行こうと思っていたが、パンが体に良くない食品と分かってしまった今、どうしようかと悩んでいる。

 パンは美味しい。バターをたっぷりとぬってコーヒーを飲みながら食べると幸せである。

 私の町にもブランドのパン屋さんが何軒もある。それぞれに美味しく、あるブランドに食べ飽きると違うブランドを食べたりしていた。

 それが食べられないと分かった今、私はどうしたら良いのか分からなくなった。

食べたらどの程度悪いのか。癌になるのか、それとも胃がやられるのか。肝臓に悪いのか。私はもう体のどこかが悪くなっているのか。

 こんなことならテレビを見て、本を読めば良かったと今更後悔している。悪いけれど大した悪さでなければ、時々は食べるのだが。

 もしパンが食べてはいけない食品なら、厚生労働省は何故製造を許可するのだろう。あるいは大して悪くないのか。その辺は分からないのだが、食品行政はどのような基準でやっているのか、考えてしまう。

 あの美味しかった進駐軍のパンはどうだったのだろうか。やはり彼らが使用した添加物は有害だったのだろうか。

 もしそうだとすればこれは根が深い。小学校のころからだとすれば相当昔である。そんなころから有害な食品添加物を使っていたのだろうか。

 しかし食べたい。美味しいパンを食べたい。昨日食べなかったから、今日は食べようと思っている。

酒巻 修平

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

前の記事

身体の使い方

次の記事

ぐい吞み