医師百態

医師は我々の生活に大きな関係のある職業人である。医師も人だから興味ある人、面白い人、滑稽な人、横暴な人、不遜な人、有能な人、無能な人、それぞれ我々一般人と何ら変わることはない。

 ある医師に診断してもらったことがある。何故病気を治してもらうと言わないかというと、医師は病気を治療することを目的としていないからだ。何も医師を馬鹿にしているのではない。原因が分からないトラブルは解決法が見いだせないからだ。辛うじて原因が分かっているのは病原菌によるもので、これは近代医学の大いなる成功例と言える。他は症状の軽減や消去が目的である。

 結核は江戸時代「労咳」として恐れられ、死病であった。それが第二次世界大戦のころ病原菌によるものであると断定され、抗生物質で病原菌の駆除に成功して以来不治ではなくなった数少ない病例である。

 虫歯も同様で、虫歯は虫歯菌に歯が犯されて発病する。今はその予防法も確率していて怖い病気ではなくなった。病気の中で一番数が多い。骨折は病気に入らないが、整形外科という病院で治療を受ければ原因が単純であるので、すぐ直る。しかし整形外科は筋肉系の病気にはあまり効果的な治療法を持たない。私は捻挫なら2,30分で治してあげられるが、整形外科では1週間程度治療期間を必要とする。

 私はオペラを歌っている。あるとき練習のやり過ぎで喉を傷め、耳鼻咽喉科に掛かった。喉に機械を挿入されて5分で診察は終わった。結果は単なる声帯の使い過ぎということで、一安心。診察料を支払おうとすると「今日はたいしたことはやっていないので料金は要らない」と言われ、はたと困った。こちらの気が済まないから、何日かして菓子折りを持って病院の事務員さんに「皆さまでおあがり下さい」と渡してきた。治療費よりお菓子代の方が高いし、態々行くのも面倒だがその医師の精神には驚いて親しみが湧いた。それから15年ほど経って息子がその医師に掛かるとやはり無料だったとのこと。息子も対応に困っていた。心温まる話である。

 パンを1か月も食べ続けるとアトピー性の皮膚炎に掛かる。色々と調べたがパンの原材料にはアレルギー反応が出ない。仕方なく会社の近所の皮膚科に行くと老齢の医師がいて仲良くなった。その医師は私には診察券をくれないのでくれと頼むと「何故診察券が欲しいのだ」と聞く。考えれば診察券などなくてもことが足りるが、何かもの足りない。でやっぱり欲しいと再度懇願すると今度は「何枚欲しいのだ」と5,6枚白紙の診察券をくれた。その皮膚科に行くと診察券がないものだから、受付で名前を言うとそれを聞き付けて、診ている患者が終わると待合室に出てきて、「修平ちゃん。入れよ」と言う。前に何人も待っている人がいるのにと思いながら診察室に入るといつもの薬を処方してくれて終り。後は雑談をするだけだ。あるときAVを入手できないかと頼まれ、アメリカに出張に行った序に買ってきた。しかしアメリカものはだめだ、日本のものを手に入れろ。そして看護婦さんに分からないように渡してくれと頼む始末。調達して持って行くと当時手に入れにくい巨人-阪神の野球の切符をくれた。

 私は若いころ何故か「爺殺し」で老齢の人に好かれて良い思いをしたことが多い。いまでは無修正AVの入手も簡単になり、こんなことは昔話になってしまった。今はその病院はもうない。

 私の家系は代々喘息患者を排出する出来損ないの家系である。私も生まれて間もなく喘息が発病して死ぬ思いをしたことも再三ある。33歳ころ独立して仕事を始めると不思議に発作がなくなって、以来長期間病欠なしである。最近は特効薬が出きて、発作に苦しむことはなくなった。有難いことだ。勿論医師が優秀なのではなく、イギリスにある製薬会社のお陰である。

 あるとき病気難民になり、近所の内科に掛かった。この医師は酷い人で、当時喘息の治療費は無料なのに、それを知らずに料金を取り、小児用の分量の薬を出した。処方箋を薬局に持って行くとこれでは効きませんよと馬鹿にされる始末。その医師は近所では評判の医師だが、無茶苦茶である。

 病気と長年付き合いしていると病気のことを研究するのが人の常だ。私も例に漏れず種々勉強した。そこで分かったのが、病気には必ず脳が関係しているということだ。人には体の不具合を自動的に修復するプログラムを組む機構が備わっているが、それが何かの理由で作用しないので、病気が発現する。

 その機構を全世界の科学者が研究しているが、いまだにその機序が分からない。私には私の意見があるのだが、ここはその発表の場でないので、触れないが、先端科学がそんな状態だから医師に病気が直せないのは止むを得ない。

 だからその積りで医師の診断を受けるのだが、良い医師は原因が分からないと言う。駄目な医師は病名を簡単に告げるがほとんどの場合、間違いである。あるとき櫨の樹液が手にべったりと付いてアレルギー症状を起こした。皮膚科に行くとルーペを出しておもむろに「これは老化現象です」と言った。私は原因が分かっていたが、この医師がどの程度の能力を持っているのか調べるために黙っていた。それで「違いますよ。これは漆かぶれですよ」というとぶすっとして薬を調合してくれた。

 まだまだ面白いことが多いが次項に回す。

酒巻 修平

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