日本人とイスラム人の老後

 機会があってあるパキスタン人と仲良くなった。その人はお店を経営していて話が面白いので閑があれば店を訪ねて時間を過ごした。私も話好きであるが、その人は更に話好きで、自分が見た日本人の行動パターンや考え方を分析してみせた。

 パキスタン人の多くがイスラム教徒だが、見聞きしている限り我々日本人と変わりがない生活をしている。彼は豚肉は食べないがアルコールを飲み、もう敬虔なイスラム教徒ではない。一般人並みの欲望もあり、ニュースで報じられる危険なイスラム教徒とは程遠い。

 日本人の女性と結婚したが、離婚。男の子の親権を裁判で争って、経済力を裁判所が認め、養育権を手に入れた。それを嬉しそうに話す。至って平凡な人である。この人と会って話してみるとアメリカのトランプ大統領がイスラム教徒の入国を一時禁止したのは噴飯ものである。

 土曜日には息子を連れてお店に来る。息子は退屈だろうに、一日中お店の椅子に座り所在ない様子。お小遣いをもらってどこかに出かけることもしない。極めて慎ましい生活を送っている。

 その人は色んな話をしてくれる。パキスタンはインドと国境問題でもめていて、仲が悪い。インドもパキスタンも核爆弾を持っているので、北朝鮮のことを正当だと考えている。

 論理的に考えれば今大戦で勝利した連合国側の国々は全て核爆弾の持ち主である。その他の国が持とうとすると「核不拡散条約」の締結を迫り、締結国が核を持つことを何としてでも阻止しようとする。

 核爆弾は人類に極めて危険な武器なので、コントロール能力がある国だけが所有を許されるというのがアメリカなどの言い分だが、アメリカは日本に2発もの核爆弾を投下して被害を受けた一般人が何十万人も死亡した。

 そんな矛盾した要求を各国に押し付けるアメリカは強国だからそんなことができるが、反対に考えると核爆弾を持つことは国家防衛の一番強い手段である。北朝鮮は現状維持という最終目的のために核を保有する。それをこのパキスタン人は当たり前と考えている。私はアメリカの政策にも反対だが、だからと言って北朝鮮の行動を容認することもできない。

 パキスタンは日本と比較して貧乏国である。一部の政治家や企業家で途方もないくらい金や資産を持っている人も当然いるが、一般人の生活は日本の戦前より劣る。

 ここでは民主的な政治を標榜していても普通に考えられる社会保障は全くないと言っていいだろう。従って国家の代わりに親、兄弟、友達がお互いに助けあって、経済的な危機に陥った場合は金を出し合ったりする。

 人は老後まで働けない。多くの不動産を保有する人は不労所得が入ってくるので、老後も困らないだろうが、全ての人にはそんな状態は当てはまらない。そこでパキスタンでは育てられた子供たちが寄り集まって自分の父母の面倒をみることになる。

 老後日本では政府が面倒を見ているようだが、やがてそのシステムは破綻するとそのパキスタン人は予想している。確かに今の若い人たちには充分な年金が行きわたるとは思えないので、このパキスタン人の言うことは当たっているのかも知れない。

 あるいは現状を見てそんな近未来の予想を立てているとも考えられるが、日本国の今の財政状態から計算するととてもじゃないが、豊な老後の生活が保障されるとは思えない。

 しかしパキスタンでももし子供がいない家庭や子供が親を養えるだけの資力がない場合はどうするのだろうか。どちらのやり方が良いのか分からないが、もっと多い年金を支給するには国家財政がもっと豊かでなくてはならない。

 昔会社は利益の65%くらい税金を徴収された。今はもっともっと低いだろう。これは海外との競合を考えての一面があるが、もう少し考えられないのだろうか。

 今の若い人は気の毒だ。老後の不安に怯えてせっせと貯金をする。すなわちパキスタンのように子供が面倒を見てくれる訳がないし、政府を当てにもできない。

酒巻 修平

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