生れてから死ぬまで予備校

 最近は良い幼稚園に子供を入園させる予備校があるらしく、経済的に余裕のある家庭では子女をそんな幼稚園に入園させるらしい。そんな幼稚園では遊びもするだろうが、目的は良い小学校に入学させることのようだ。

 幼稚園ではどんなカリキュラムが行われているかは知れないが、遊びは二の次になるだろう。まだまだ考えるという脳の機能が未発達である幼児は小学校の入学試験に合格すべく、記憶だけに頼った勉強をする。

 こんな予備校では子供だけではなく、両親も色々と勉強をしなければならない。それに親の職業、収入などの格が問題にされるので、親は自分自身のお膳立てもしなければならない。

 さて目出度くそんな幼稚園に入園してそれなりの勉強をすると一流小学校に入学できる。しかし今度は中学校への入試の準備をしなければならない。1,2年のころはまだ遊ぶ時間が少しあるだろうが、3年生ころになると家庭教師を付けられるか、予備校や学習塾に行って中学受験の勉強をさせられる。

 そうして遊ぶ時間もない子供が成長していき、いよいよ本格的な受験時代に突入する。何とか良い中学校に入学できれば親は万々歳である。合格すると一息付く間もなく、高等学校のことを考えなければならない。

 もう本格的な受験勉強をしないと有名大学に入学するのは覚束ない。ひたすら受験問題に取り組む日々がやってくる。勿論これは勉強ではない。数学でも国語でもできるだけ多くの問題に接し答えを記憶するか、答えを出す方法を暗記する。

 娘が小学校のころ鶴亀算を試しにやらせた。すると何も考えずに答えを2,30秒で出してしまった。私は唖然としたが、考えると小学校(公立)でも数学の解を出すために暗記させているらしい。勿論先生も暗記して子供に教えていると分析した。

 こうして暗記漬けの勉強をさせられた高校生がいよいよ大学受験に臨む。問題数は多い。考えていれば先ほどの鶴亀算のように早く答えを出すことができない。思考には少し時間が掛かるのだ。そこでものを言うのが暗記だ。只管暗記をして時間を掛けずに問題に答えを出していく。

 ところで頭が良いとはどういうことだろうか。色々総合するとおおまかには次の通りになるらしい。

1. 事物や考え方を発明できる能力

2. 思考を凝らして何かを分析、統合などして深く幅広い知見を持つこと

3. 物事の記憶に長けていること

1は天才である。ベートーベン、アインシュタイン、ダ・ビンチ、ピュタゴラス。今までになかったものを創造した。

2はそれこそ優秀な人である。有名ではなくても、良い仕事をし、常に世の中を活性化させる。即ち文化の創造者である。

3は物知りである。文化の継承には最適だが、新しい物事を作り、際立った考え方はできない。政府の官僚たちがそうであろうと思われる。

物を記憶するのは人以外の高等動物でもできる。学校はこんな低次の人を作るために運営されている。勿論記憶力が極めて良くて、余り勉強をしなくても優秀な大学くらいには入学できる能力を持っている人がいる。それは例外だが、それでも日夜考えていないと人の脳は劣化する。

 さて優秀な大学に入ると今度は就職である。有名な先生のゼミを受講して、卒業。それを頼りに高級官僚になれば双六でいう上がりだ。人生バラ色であり、所謂成功者と考えて良い。

 ところが人生は長い。物を考えたことがない人はこの激動の時代、右往左往するだけで、何ら適切な対処をできない。そして老後のことを考える。職場自身も良い老後を過ごすための予備校のようになっている。

 高級官僚は多額の退職金を手にして天下る。一般の人はやはり老後のことを考え、預金量がとても気になる。会社で働くのは老後生活の予備校とも言える。酒も飲まないし、異性にも昔ほど興味を持つ人が少ない。

 こんなことを書いていても馬鹿馬鹿しく、そんな生き方をしてきた人が気の毒だ。しかし社会の要請でそんな人が急角度で増加している。安倍晋三氏が唱えている「美しい日本」はだんだん遠ざかる。

酒巻 修平

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