サウジアラビア領事館内でのカショギ氏殺害

  また国の元首あるいは最高権力者による殺害が行われた。殺害を指示したのがサウジアラビアの皇太子だということは証明されていないが、少なくても何等かの関係があることは事実だろう。

 もし皇太子が直接関与しているとすれば動機は権力の掌握や強化に求められてもいいだろう。

 大きな権力を持ったことがない我々にすれば権力がどんな種類のものでどこに大きな魅力があるのかは知れない。

 現代社会ではほとんどのものが金で買える。そうすれば金で換えないものが権力には付随しているのだろうか。一つには最大権力者には法律が適用されないまたは緩和されるということが上げられる。

 即ち自分の好きなことが好きな方法で達成することが可能になるのだ。本当の意味の民主国家では最高権力者といえども法律がその行動を縛る。

 とすれば法律が最高権力者を縛らない国はまだ未開国とも言えそうだ。自分のやりたいことをやりたい方法でやる。

 確かに魅力的な一面はあるのだろうが、自分から権力が去れば新たに権力者になった者が自分に対しても生殺与奪の権限を事実上持つことになる。

 これは恐ろしいことだ。自分が過去にやってきたことが今度は自分の身に振り掛かるとすれば何が起こるかが予想することができる。

 ソビエトのスターリンはその事実を知っており、晩年は部屋にこもりっきりで姿を現すことは極めて限られた場合だけだった。そこに幸せはなく、不幸な生活があるのみだった。

 それでも人はそのような権力を握りたいのか。不可解であるが、実際には今も中国、北朝鮮、または韓国などで起こっている。

 今度の事件ではトルコ政府はサウジアラビアの動きをほぼ完全に察知していたようだ。領事館内には盗聴器、盗撮機が仕掛けられていた可能性が高く、大使館員の行動は監視されていた。

 外交官特権で入国する人物も全て監視下に置かれ、何等かの事件あるいはトラブルが発生することはトルコ側に逐一知られていた。

 トルコの最高権力者であり独裁者のエルドアン大統領はそうであるが故に同じ欲望を持つムハンマド皇太子の心理状態がつぶさに理解できたのであろう。

 トルコは極めて優秀な諜報活動能力を有しているが、それに対してサウジアラビアは無防備過ぎた。トルコが諜報活動をしていることは当たり前なのにそれに対応する行動を起こしていない。いかにもドジである。

 ムハンマドはまだ次期独裁政治家の段階にいた。トルコの諜報活動に対処する心構えが備わっていなかったのかも知れない。

 今回の事件の中で異例であるのはトルコ内にあるサウジアラビア総領事館がトルコの捜査の対象になったことだ。

 国際条約に照らし合わせれば領事館は自国内にあっても、中は治外法権であり、いわば他国である。

 自国を無断で捜査されたことに関して今のところサウジアラビアは正式な抗議も行っていないようだ。発生した事件からそんなトルコの違反をサウジ側は抗議さえしないのか。

 それにしても独裁者は人の命を政治的な駆け引きに使い、自己の保身のために犠牲にすることに躊躇はない。

 エルドアンはそんな周到な諜報活動をするくらいだから、事前にカショギ氏が殺害されるのを知っていたのではないか。事件が発生すればしめたものだ。自国の窮状を一気に解決する大きな武器を手に入れた。

 エルドアンは事件の発生を阻止しなかった。そうだとするとエルドアンもカショギ氏の殺害の犯人の一味とも解釈できる。

酒巻 修平

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