リモートワークとバブル経済

 コロナの流行により人々の行動が規制される環境の元、トヨタがコロナ終息後もリモートワークを続行する政策を発表した。

 トヨタはもう何十年も車だけの事業の将来に不安を持っており、新しい事業の開発を目指していたが、トヨタホームがほぼ唯一事業化に成功した事例であった。

 すなわちトヨタほどの巨大な事業を運営する企業が新しい事業を発掘展開するのは容易な技ではないのだ。ここに巨大企業の苦しみがある。

 ホンダは航空機事業に進出する意向を見せ、すでに実際の事業化がある程度進んだというのに、トヨタは追随しなかった。その理由は明らかではないが、何か躊躇する理由があるのだろう。

 トヨタはトヨタホームを成功させたが、積水化学や旭化成が住宅建築で成功したほどの規模にはならなかった。車では日本一であっても、住宅建築ではそうはならなかったのは車という巨大で大成功を収めた事業があったからに相違ない。

 トヨタに取ってはやはり車に頼らざるを得ず、従って車の製造、販売事業で多額の収益を上げるのが現在目に見える形での目標となっているのだ。

 世界的に今や大きな事業ジャンルはITしか思い当たらず、新規事業の立ち上げは困難を極める。

 どんな事業も平均30年の寿命しかないと言われている経済界にあってトヨタの苦悩は大きい。

 そんなトヨタがコロナ終息後もリモートワークを続けて経費を節減するのはやむを得ない政策と言えるが、トヨタの経営方針は経済界に大きな影響を与える。

 各企業の社員が朝会社に出かけて一堂に会して仕事をすることはちょっと考えれば絶対必要とは言えないことがよく分る。

 コロナの流行はそんな不必要な経費を削減する大きな機会になった。だが経済の将来を展望するとそれは経済規模の縮小に他ならない。

 周囲を見回してみよう。我々は規模の大小は別として必要以上に大きな家に住んでいる。裕福な人は戸建ての家に住み、庭もあるかも知れない。

女性は何十足も靴を持ち、美しい装いを心がける。化粧もするし、美容室に行かない女性は少ない。

そんな身の回りのことではなくても、たまには家ではなく外で食事をするし、旅行にも行くだろう。

それらは全てバブルである。大きなバブルは1992年ころに終わってしまったが、それでも基本的なバブルは続いている。

バブルがなければ経済は規模を拡大しない。エンゲル係数という概念は日本にはもはやなく、先進国で餓死する人はほぼいなくなった。

そんな中コロナはバブルを縮小させる方向に経済の舵を切らせる原動力になったように思える。人の生活と経済の関係について盲目な行政はそんなことに気が付かず、おろおろするばかり。

企業はコロナが終息すればリモートワークを止めて欲しい。それでなくても経済を拡大する大きな要因が少ないのだから。

イギリスで産業革命が起こった大きな原因がペストの流行で国民の半数が死亡して労働力がなくなったからだ。

ペストはそういう意味では経済に大きな貢献をした。だが今度のコロナはその逆に経済を縮小する方向に向かわせるようだ。

そうあってはならない。それでなくても今や経済発展を推進する要素が少ない。中国の低い労働賃金はもう終了し、企業は下請け国を求めて彷徨う。

アジアの諸国がそのターゲットだが、そんな国々でもやがて労働賃金の上昇を見るだろう。そうなると低い労働賃金が残るのはアフリカと南米だけだ。

そして企業がそこへ向かうが中国、アジア諸国と同じ経路を辿って、賃金の上昇が見られれば、企業はどうするのだろうか。自国に回帰するのかそれとも各企業が独自の方法を模索するのか。どちらにしても世界的に経済の拡大は制御されるだろう。

バブルがなくなり人々が自然に消費生活に金を使わなくなる社会を思い浮かべれば良い。そこには火の消えた状況が想像できる。

コロナが終わったらもうリモートワークを止めて欲しい。若者は盛り場へ行って安酒を飲んで騒いで欲しい。顔を顰めさせるような若者行動が経済を支える一つの原動力になるのだ。

貧富の差をできるだけなくして比較的金のない人にも金が回るようにして欲しい。そうすればバブルは拡大するだろう。

風邪程度でもなく本当は怖くないコロナに怯えてバブルを制御するような発言を政治家はしないで欲しい。

病気でなくなる人はコロナがなくてもいる。7月コロナで亡くなった人は日本全土でたったの30人。そんな状況を必要以上に煽り立て、無知な人の恐怖心を煽るような番組をテレビ会社は作らないで欲しい。

それを巧みに制御するのが政治であるが、政治家はそんな役目を果たしていない。だがそんな政治家を選ぶのは我々国民であり、真に能力のある政治を選出しなければ生活の困難は天につばきを吐くように我々に戻ってくるだろう。

酒巻 修平

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