安倍晋三氏と薩長、会津
戊辰戦争から会津藩崩壊に至るまでの歴史には作家の虚構や史実などを引き合いに出し、種々な解釈が行われている。
会津は当時財政破綻状態であり、武士以外の人達は武士がに誇りや覚悟だけを踏まえた行動が多かったことに大きな不満があった。
当時の会津藩の人口は約30000人、その内武士は20000人である。こんなに非生産人口が多ければ藩の財政が健全である筈もなく、武士でも食うや食わずの生活をしているものも多かったと推測される。
一般に江戸時代の武士は実際の仕事をしている人が少なく、仕事をしていても必要不可欠なものとは言い難い。この時代は武士のためだけの政治がまかり通っていただろう。
戊辰戦争に敗れた会津は本土決戦(会津での戦闘)に備えて、玄武、青龍、朱雀、白虎隊を編成したが、悲劇が伝えられる白虎隊は16歳以下の武士の子が所属していた。中には12、3歳と少年も混じっていたと言われている。
新政府軍と比較して会津は戦闘員の数も装備も格段に劣っていたので、勝ち目はないと幹部は覚悟していたようだ。それなのに敢えて戦闘を挑むのは日本人の特徴を良く示していて、戦闘や戦争は精神論だけでは勝利できないことは歴史を学ぶと明確に分かる筈だ。
結局悲劇は起こった。しかしこれは武士階級だけの話。一般人の生活に変わりはなかった。
しかしその史実に虚構を加え白虎隊の悲劇を描いた小説が次々を書かれ、歴史の悲劇は会津の人々にも記憶として残ってしまった。
私の友人に鹿児島出身の人がいる。その人が福島県に行って出身地を言うと露骨に嫌な顔をされ、商取引は上手く行かなかったと話してくれた。これは最近のことだ。「福島へ行ったら出身地に関する話題には触れるべきではない」と言う。
戦闘に勝利した新政府軍にはもう蟠りはない。それは勝ったからで、負けた側にはいつまでも怨嗟の感情が残るらしい。
勿論そうでないケースも多いだろうが、安全を考えて福島では出身地に関する話題は禁物である。
安倍晋三内閣総理大臣は長州の出である。お祖父さんの岸信介氏もそうであり、安倍氏は案外古い思想を持っているような気がする。
彼の最終目標は戦前の強い日本を取り戻すことにあると分析できるが、これは家庭教育から生じたものかどうかは部外者には知り得ない。
しかし彼が任命した閣僚には北側日本出身者が極めて少ない。復興大臣は福島県出身者であるのはもしかしたら福島県人の怨念を考慮してのものではないかとも邪推できる。
戊辰戦争から早や150年。いつまでも悪感情を引きずるべきではないと思うが人の感情は簡単に論じることはできない。
韓国の大統領はほとんどが慶尚北道出身者である。金大中は大統領になったが彼は初めての慶尚南道出身者である。慶尚北道の人は慶尚南道の人に対して今も侮蔑の感を持っている。
6世紀から7世紀の朝鮮半島では高句麗・百済・新羅の三国が鼎立していた。南北の感情的な歪みはそのころ以前からだから500年以上の怨嗟の歴史がある。
安倍氏は非常に有能で働き者だ。しかし時々お友達内閣などの言葉で表されるように、友愛などを根拠として政治手法が見られないことはない。
海外の要人と会談する際にもこの友好関係を強く重んじる。これは大切なことだがそれが行き過ぎると心が狭いとの批判を受けかねない。
取りざたされる噂の根拠は案外彼の精神構造から来ているようにも思える。日本ではもう南と北という精神的な区別をなくす努力をしてもらいたい。
酒巻 修平