医師の誤診

 人の体は複雑、不可思議、そして精緻にできている。これは他の生物も同様であろうが、人は頭脳が極端に発達しているから、猶更である。

 このように神でなければ造ることができないような体の病気を人である医師が原因を発見、あるいは症状を確定するのは困難を極める。

 その中でも特に診断が困難な部位があるが、比較的容易であると考えられる箇所の症状を改善するのはできるかもしれない。

 それは体表からある程度観察できる病気か、原因が特定し易いものであろう。眼科、歯科、整形外科、皮膚科などは病気の特定、それから来る症状の軽減、解消は何とか可能である。

 ところが簡単であるからこそ、医師が勉強を怠っているのか、これらの科に誤診が多い。

 ある日私は庭に植えてある櫨の木にかぶれた。櫨は漆科の植物で漆にかぶれるようなものだ。銀杏の外皮を素手で剥いたりしたらかぶれる人が多いのと同じだと思えば想像が付く。

 そこで皮膚科の診断を仰いだ。私には原因が分かっていたので、それを伝えれば済むのだが、自分の体を預ける医師の実力のほどが分からない。そこで、黙ってその医師の診断を待った。

 医師の診断は老化現象ということであった。さんざん拡大鏡やルーペを使い症状を観察した結果である。ある皮膚科で懇意にしている医師が「皮膚科の診断など簡単だよ。外から見えるから」というのをその時思い出した。

 もちろん原因は分かっていて、老化による皮膚の疾患ではないから、医師の診断をその通り受け入れると処方される薬も違う。薬の薬効は期待できないから、体に備わっている治癒力に頼らなければならない。これでは時間が掛かるし悪化するかも知れない。それに診断は無意味になる。

 そこで仕方なく、「違いますよ。これは漆かぶれです」と言って、その方面の薬を処方してもらった。もちろんその医師の元には二度と行かない。

 東京大学附属病院の整形外科で妻が肉腫(癌の一種)と診断された。妻は二回も切開手術を受け、それ以降その部位の筋肉は使えなくなった。癌ではなく、検体の取り違えで誤診だった。

 ある土曜日、余りに足が痛いので開いている整形外科を尋ねた。その医師は診断の結果を出せない。原因が分からないと見えるのだが、逆に聞かれた。「あなたは何をしてもらいたいのか」。もちろん治療してもらいたいのに決まっているので、この質問には戸惑った。

 またここにもいい加減な医師がいると思って「原因を知りたい」と言った。もちろん医師は答えられない。何の治療もしないまま、その医院を辞した。あとで分かったことだけれど、原因は酷い「靴擦れ」だった。

 歯科も問題が多い。これは誤診に関することではなく、医師の金儲けと関係がある。歯に詰めたものが取れて、食べ物を噛むと痛い。明くる日掛かりつけの歯科医師に直して欲しいと要求すると早速直してくれた。

 ところが食事をしようとすると詰め物をしない前よりもっと痛くなった。もう一度その歯科医に行くと良いのだが、前から少し不信感があり、通りすがりの歯科に飛び込んだ。

 色々検査をしたが、結果は歯の噛み合わせが悪いということだった。噛み合わせが悪いのは事実だが、痛い原因とは違う。噛み合わせなど調整すれば何とかなるもの。その新しい医師の目的は新しい義歯を作らせることにあった。費用を聞くと60万円くらいとのことで、信用できず、そこも辞めた。いま私には歯科医師はいない。

 眼科はもっと酷い。車を運転していると目がとても痛くなり、早速眼科に行った。これは緑内障である。今日すぐにでも手術をしようと言われた。そんな危険なことはできないので、考えた挙句違う眼科医のところに行った。

 ネットで探した医師だが、そこではこれは緑内障ではない。白内障で、手術は簡単で何度でもやれるから、今日すぐにでも手術をしましょうとの言い草。白内障の手術が何度もできるとは思えないから、適当にお茶を濁し、もう行かなくした。

この両医師のどちらかは間違っている。あるいは両方とも間違いである。これらの医師の目的は手術代を稼ぐことにあるのは見え見えだ。

大切な目をこんな不誠実な医師に手術させる訳にはいかない。私には眼科医もいない。評判の良い眼科医のところはとても混んでいて、行く気にならないし、評判通り技術が優れているかどうかは分からない。

今のところまともな整形外科医、眼科医、皮膚科の医師、歯科医を私は知らない。だからその部位の症状が出たらどうしようかと困っている。

医師の誤診の理由は二つある。一つは技術不足によるもので、もう一つの更に悪質なのは意図的な誤診である。

昨年と一昨年の年末に軽い風邪に罹った。信用している呼吸器科の医師の診断を受けると肺炎とのこと。だが体は辛くないし、熱も平熱に近い。それでセカンド、サードオピニオンを聞くために他の病院に行ったら、高熱が出ないような肺炎はないと断言された。そう言えば薬も飲まずに簡単に治ってしまった。

最初の医師は優秀だと信頼していたのに、裏切られたような気になった。とても残念だ。これは意図的な誤診で、MRI,CTスキャン、レントゲンの使用料を稼ぎたかったのだと思う。医師の台所事情を分からない訳ではないが、それは患者の責任ではない。誠実に診断を行い、勉強、研究をしている医師のところには患者が多いのは自然だ。

しかし私の経験したところほぼ全ての医師は誤診をする。あるいは処方する薬の副作用が頭に入っていない。誤診がないのは風邪くらいか。多分誰でもそうだと思うが、良く注意して医師の診断を吟味すると誤診が如何に多いかを発見すると思われる。

人の体は複雑怪奇だが、それでもアプローチの仕方はある。人には病気を治す力を生まれつき持っている。それを信頼しつつ、分かる範囲で診断し、薬を処方すれば良い。診断料を稼ぐための治療はその人の尊厳を損なうと思うが、私は皮肉れているのだろうか。

酒巻 修平

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