少子高齢化の隠れた理由

 ずばり定年制度である。日本のほとんどの会社はある年齢達すると定年になったとして、その社員を馘首する。そうするとその人は貯蓄と年金だけで暮らさなければならない。

 子供の教育や家計費あるいは車を持つことで若いころは多くの経費を支出した。だから老後を豊かに過ごすだけの貯蓄を持っている人は少ない。もしあっても子供にも残したい。

 だから多くの子供を持つことができないのだ。少子は将来の不安から生じる現象である。親になっても遊びたいとか他の理由もあるが、将来に対する不安が子供を多く持たない理由の第一であるのは間違いない。

 その精神を親は子供にも延長させて考える。子供が大きくなったら豊かな生活ができるだろうか。自分たちがいなくなったあと大丈夫だろうか。それらは全ての夫婦に共通する悩みである。

 定年制がどうして主として日本だけにあるか詳しくは知らないが、多分昔の隠居制度から来ていると思われる。隠居制度とは若いころに一所懸命働いたのだから、老後はゆっくりと暮らしたい。

 そんな精神から隠居制度はあったらしいのだが、これは今まで働いた人に対する報酬であった。だが今は違う。会社が一所懸命働いた人に対する罰則のように思えてならない。

 昔の家族は大所帯で3世代くらいが平気で一つの家で暮らした。今は小家族制が定着して親と暮らす子供、あるいは子供と暮らす親が少ない。だから経費が昔と比べて沢山掛る。隠居した人の面倒など見れるはずがないのだ。

 元従業員でいまだに私に頼ってきている人がいる。貿易関連の仕事に付いているのだが、この人が最近定年になった。しかしその会社では他に貿易の専門家もいないし、採用するにも骨が折れ、採用できても仕事を教える人もいない。

 それで同じ人が勤め続けるようになった。その人は一安心だが、給料は半分になった。しかしまだ年金をもらうまでには5年もある。仕方なく預金を取り崩して生活費の足しにしている。

 幸か不幸か彼の夫婦には子供がいない。いたとしても親に生活費の一部を上げる能力を持ってはいないだろう。そうして夫婦は老後のために取っておいた貯金を取り崩す。

 ここで不思議なのは、彼の給料が半分になったことだ。彼は健康で能力の減衰はない。それなのにどうして会社はそんな社員の給料を定年が過ぎたという勝手な理由で半分に減らすのだろうか。

 この状態は一人彼だけではない。そんな話しは諸所で聞く。今は求人難だし、定年を迎えた人も雇い続けなければ会社は困る。それなのに給料を相当減額する。経営者の甘えがそうさせたのか、政府の法制が未整備なのか。

 アメリカには定年制はないだろう。しかし仕事ができなくなるとすぐに馘首される。あるいは減額した給料を提示される。これは冷たいようだが、合理的だ。嫌なら転職をすれば良いし、転職先はある。彼らは年齢と仕事の能力は反比例するなどとは思っていない。

 少子高齢化社会というのはちょっと言葉が違う。これは単に少子社会なだけだ。子供が沢山生まれればこの状態は解消される。定年制が廃止されれば高齢化という言葉もなくなことがあった。

 しかし彼らの能力は全く役に立たなかった。言われたことはきっちりとこなし、約束は守るが、考え力が0なのだ。中小企業ではシステムが未完成だから、自分の仕事においてもシステムを作りながらやらなければならない。ここでシステムというのはコンピューターによるプログラムのことではない。

 新しい顧客はどうして獲得したら良いのか、出来の悪い取引先の担当者とどうすれば上手く付き合えるのか、役所を説得する最良の方法は? などなど自分で考えて解決していかなければならない。

 それが有名大学卒業生にはできないのだ。入試対策で記憶力を真剣に磨いてきた彼らには思考力が失せてしまった。私はできる限り、高校卒業者を採用することにしている。

 会社の仕事は例えば量子力学を研究するほど難しくない。社会常識に基づいた処理がほとんどで学歴は必要ない。まして思考能力を失ってしまった大学卒業生はいると邪魔だ。

 我が社にも定年制がある。「働く気力が減衰し、あるいは健康を害し。またはもう仕事はしたくない人」が辞めてもらう対象者だ。定年制ということば不適当であるが、年齢を重ねてそんな状態になればそれが定年なのだ。

 こんなことは中小企業を経営した経験のない、あるいは経験しても考えたことがない想像力に乏しい政治家や官僚には考え付かないだろう。少子高齢化は寿命が長くなったことと夫婦が将来に不安を抱えているからだ。年金より給料の方が多い。定年制を廃止すれば老後は楽になる。でも何歳から老後なのか。80歳でも別に支障なく働いている人をよく見かける。子供を産みたくなくなったおおきな理由は将来の収入が少ないからだ。その元を作っているのが定年制である。

酒巻 修平

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