アルツハイマーになり難い方法

 時々行く診療所に久しぶりに訪れると院長の様子がおかしい。やたらと攻撃的で私に「ここでは血液検査もやっていないじゃないか。貴方の診察は拒否する」と宣告された。

 もちろんこれは医師法違反である。来た患者には治療を試みなければならないのだが、そんなことを言っても無駄なような雰囲気である。

 その医師は有能で、他の医師が考え付かないような薬の処方をする頭脳の持ち主であるが、その日の態度は極めておかしかった。

 その年は嫌なことが続いた年で、その医師の診察を受ける前にもいつもいく寿司屋さんで、女将さんが私のことを知らないと言うなど変なことが起こったばっかりだった。

 その医師はアルツハイマー病に罹患していたのだ。医師がそんな病気に罹ると患者は混乱するし、体に害が及ぶ可能性が高い。頭脳明晰な医師だったので、私は唖然とした。

 看護婦さんたちは御免なさいと謝るが、もうその診療所には行く気にならなくなった。その後診療所は子息が継いだが、聞くところによるとお父さんである前の院長は間もなく亡くなったらしい。

 このようにアルツハイマーは自分だけではなく、回りの人にも大変な労苦や迷惑を掛ける。本人はそんなことはいずれ分からなくなるが、初期のころは自分がアルツハイマーに罹患したことを知ると大いに悩み、悲しむと思われる。

 この病気は知能労働者にも案外多い。だから頭脳の良し悪しが原因ではないことは明白である。

 ある種類のアミロイドが脳に蓄積して発症するとも言われているが、これも100%原因とは言えないとする研究がある。

 若年性のアルツハイマーでは元々持っていた遺伝子がこの病気を発症させるとされてもいるが、何が真の原因かはまだ解明されていない。

 大体病気の根本の原因など一切不明だ。医師は病気を治す職業ではなく、症状の軽減、消滅作業をする職業人である。

 何故病気の根本原因が解明できないかは、生命ということ自体が複雑で深淵であることに起因するのだ。

 病気は病人自身が治癒する以外にない。細菌やウイルスの寄生虫が原因だとするとそれを除去すると病気が治癒されるが、そんなことは例外的である。それにウイルスが体内に侵入しても病気を発症しない人もいる。

 ウイルスが如何にして細胞を冒しどのような過程で病気の発症に繋がっていくのかは未だに分かっていない。だからウイルスを除去すれば結果として病気が治るというだけで、本当に病気の発症過程が解明されて病気を治癒したということにはならない。

 ここで言いたいのは、病気は病人自身の体の機能で治癒しなければならないということだ。風邪を引き熱が出るのはウイルスが熱に弱く、体がそれを知っていて発熱するのだ。だからむやみに熱を下げてはいけない。

 病気になると体はその病気を治そうと活動を始める。それは脳によって命令される作業である。病気は脳に直させなければならない。だから脳には作業するに足りる強さが求められる。

 それには血流が充分でなければならない。脳に行く血を充分にするのはどうするか。こんなことを書いてある本があった。「運動とは新たな筋肉の経験である」と。

 歩くだけでは運動にならないとよく言われるが上記の本が言っていることが真実だとすれば、確かに歩くことは新たな筋肉の経験にならないので運動ではないと言える。

 脳も同じであろう。すると脳もいつも新たな経験をしていないと脳の運動にはならない。どんなに高度なことを考え、やっていても弁護士、医師、会計士など知的職業の人もアルツハイマーに罹患することは当然なことなのだ。

 彼らは自分の職業に慣れて、案外新しいことを考えていない。だから脳は沢山の血液を必要としない。だから脳は次第に萎縮する、それは筋肉の萎縮と同じ原因、現象である。

 アルツハイマーになり難くするには、脳がいつも新しいことをさせることだ。すなわちいつも新しいことを考え、できれば実行するのが良い。

 今年は小説を書き始めよう。コンピューターのプログラム作りに挑戦しよう。将棋も良いだろうし、俳句、短歌、書なんでも良い。できるだけ機会を見つけて新しいことをしよう。

 新しいことは脳に取っての運動である。だからそこでは多くの血液が必要になる。脳はいつも活性化されて、原因物質のごみも溜まり難いだろう。

 そうすると貴方の顔はいつも若々しい。多分10年程度は若く見られるだろう。40歳を過ぎれば自分の顔は自分で責任をとらなければならないと言われるのと同じ理屈である。

 アルツハイマーは病気の一種である。それは脳の機能の病気だ。これを治す薬の発見は困難を極めるだろう。何故なら脳の機能の解明は全く進んでいないからだ。

 病気は自分の体が直さなければならない。脳の病気は脳で治す、あるいは予防する。

 小さい病気を時々すると体はその病気を治す努力をして、病気治癒機能が発達する。よく風邪を引く子供は後々風邪には掛かり難くなる。それは体の病気を治す機能が発達しているからだ。

 だから病気をしたことがない人は大病をしてあっという間に亡くなってしまうことがある。

 脳の病気は脳で治さなければならない。薬ができても多分その薬はアルツハイマーを脳が直す手伝いをするだけだろう。

酒巻 修平

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