駄本とは何か

 寝る前少し本を読むとあっという間に眠りに陥ってしまう。その時本は手から離れて時にはページが折れたりして本を傷める時がある。

 だからもうぼちぼち眠りに陥ってしまうなと思うときには少し早めに栞を挟んで本を閉じる。栞を挟まないとどこまで読んだか分からなくなることも多い。

 私は生まれつき持病を持っていて、33歳くらいまで病と闘う生活を送っていた。しかし会社を始めて精神にカツが入ると少しずつ病気が発症する回数が少なくなった。

 それに今まで畳だった床を木のフロアリングに換えたのが大きかった。それから30年ほどは風邪も引かず、丸まると太ってしまった。決定的だったのはイギリスの製薬会社が発売を始めた新薬を使い始めたことだった。

 それ以降軽い発作も出なくなった。この点その新薬を発売してグラクソ・スミスクラインという会社に感謝している。たまたま薬の使用法で電話をしても応対はとても親切であった。

 しかし病気は治っていない。薬や医師は症状を軽減したり消滅させたりする役目を果たすが病気は治せない。相変わらず人の体に備わった機構に働いてもらわなければならないのだ。

 そのような考え方から人の体の制御はどのようになっているかを考え始めた。多分脳のどこかからあるいは総合的に電磁気を使い、全ての器官をコントロールしているのだろうとまでは思い付いたが、病気とはどんな状態から発生するか考え付かない。

 たまたま見つけた本に「生命とは何か」というシュレディンガーが書いた本を見つけた。そこには病気そのものに関する記述がないにしても病気の始原にかんするヒントがあるのではないかと期待した。

 シュレディンガーは量子力学を創設して原子物理学の基礎を作ったノーベル賞受賞者だ。本は200ページほどのものだが、化学をあまり勉強していない私には難解な部分も多く、時々前に戻っては読んでいる。

 そんな時「なぜ、人は病気になるのかー」という副題のついた「新カルマの法則」という本を見つけた。著者は「伯 壬旭」という中国人らしい。

 喜び勇んでアマゾンを通じて買った。3,4日経ったころその本が来たので、夕食もそこのけで本を読み始めた。

 先ず知ったことはこの著者が中国人ではなく日本人だったことだった。何だか嫌な予感がした。今の中国は独裁主義のどうしようもない国だが、昔からの文化は深淵なものが多い。

 ゲームでも囲碁、将棋、麻雀など西洋のチェスなど足元にも寄れない優れたものが多いし、孔子を初めて極めて優秀な哲学者、書家、画家など西洋とは赴きが違うが独自の境地を開いた天才たちが綺羅星のようにいる国だ。

 病気の治療に関しても針、灸、気功など人の体の機能を呼び覚ます手法が多い。 この本を買った理由はそんな中国の深淵な思想から出た真実や考えを教えてくれるものだと期待したからだ。

 読み始めると先ず総論がありすぐに各論がある。しかし総論は病気そのものの始まる理由を書いてあるはずがあまりにページ数がすくない。たったの2ページ半ほどだ。

 結局書いてあることは「人間の不自然な意識が病気を生み出す」だけだ。言葉が短くても事象を深く掘り下げた文章がある。「色即是空。空即是色」という般若心経の言葉は現在科学が発見してことと等価のように思える。

 色は即ち物質のことで、空は無を表すと解釈できるが、これは量子論が到達して現在最高の理論だ。物質の最小の組成は空間とエネルギーの相関関係があるだけだとされた。般若心経の記述もそれを表していると思われる。

 本には「意識」あるいは動議で「カルマ」という単語が出て来る。著者の考えが例え間違っていたとしても「意識」というものをもう少し掘り下げて書いて欲しかった。意識は脳が生み出す現象であろうとは想像できるが、それがどのような状態なのか、どんな作業をしたことなのかくらいは説明して欲しかった。

 本ではすぐに各論が始まる。最初の項は「新興宗教がエイズ・ウイルスを巻き散らす」とある。しかしそこでは新興宗教と旧来の宗教の違いも書いていないし、一体宗教とはどのようなことなのかも説明してくれない。

 それから先は読む気力が失せてしまった。「意識」「カルマ」などの語句も見えるが、その説明もない。「被害者と加害者の血管が共振する」などの文章も目に入ったが、血管のように物質的硬度の低いものが本当に共振するのか。

 駄本であった。駄本は能力の低い人が思い付きだけで描く。そしてその思い付きの程度も低い。このような駄本を出版した史輝出版も怪し気だという他はない。捨てるべきか、それとも自分の失敗の記念として保存しておくべきか。That is the questionである。

 色々な本を読む。全知全能を傾けて書かれた本はそれなりに読む価値がある。しかし今は利益を求めるのに急過ぎて内容の吟味に至らない。芸人、何かで有名になった人物、低い文化に迎合するのが上手な作家。そんな人物の本が売れるらしい。

 真に価値のある本は全書籍の5%くらいしかないのではないだろうか。しかしこれが社会の欲することであれば、私はどうすれば良いのだろうか。

酒巻 修平

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