独身の美女
美女が必ずしも結婚しているとは限らない。恰好の相手が見つからない、独身主義、離婚、婚期を逸した、など種々の理由で美女でも独身の女性は珍しくない。
理知的な顔付き、哀愁を帯びた表情、投げやりな態度など映画の主題にもなりそうな独身美女に時々お目に掛かる。日本ではまだ女性が一人酒場で酒を飲むのは躊躇する雰囲気があるが、それでもこんな女性も見かけるようになった。
男性は美女に弱い。自分は結婚しているのに美女と話しをしたい。テーブルを一緒にするか、カウンターで隣合わせになりたい。できれば一夜のアバンチュールを望んでいるけしからぬ輩がいないでもない。
酒場では美女が美女である故に損をすることがある。話しかけるのに勇気がいるとか、何となく傍に座れない。そんなことを考えている男性もいるのではないか。
しかし酒が入ると気持ちの箍が緩むこともあり、女性もつい口が軽くなる。これが酒場の効用だが、日本人の男性は気の利いたセリフを考案する能力に欠ける。ことも多い。
美しいなどの言葉は禁物だし、独身である理由を聞くなど以ての外だ。馬鹿らしい話しを如何に上手に持ち出すか、この辺りに勝敗の行方が掛かっている。
時には教養のある話しもしても良いが、相手の方に教養が勝る場合も少なくないし、そんな堅苦しい話しは敬遠されることも多い。
美女も醜女も頭の中身は変わらない。あるいは考えていることに違いはない。もしくは自分が美女であるという自信があって、酒場に一人座っている可能性も否定できない。
最近は女性の方が酒に強かったりすることも多い。どうも肝臓の機能が勝っている所為か、女性の酒豪を時々見かける。
隣に座っていると相手がこちらに話しかける場合に遭遇することもあるだろう。要らぬ下心を持たず話しに乗って上げよう。それが功徳というものだ。美女も一人の女性。特別ではなく、寂しいことがあるのも普通の女性と変わりない。
貴方の話しが面白くなければその美女は話しを止めるし、貴方にも同様の権利がある。美女は特別ではないのだ。
英語で美女を褒める言葉は種々ある。「pretty」「beautiful」「gorgeous」「handsome」など沢山あるので、アメリカでは女性を口説く単語を沢山用意したと思われる。さしずめ「gorgeous」が最高クラスか。
貴方の彼女を「pretty」と褒められたら、それは褒められたことにはならない。「gorgeous」と表現されなければ相手は貴方の彼女を褒めていない。
美女も単なる一般女性なのだが、何故か特別扱いされる。その美女も特別扱いをされることを期待するし、それに慣れている。
独身の美女がいなければ小説は成り立たないし、諍いも起らない。だから美女はやはり特別の存在なのだろうか。
美女の着ている服や靴のセンスが良くなければ美女の範囲を外れることがある。だから美女には金が掛かる。自分の金や彼氏の金、関係なく美女は生活するには多めの資金が必要なのだ。
美女は資産や地位のある男性に見初められ結婚することが多い。それなのにどうして独身なのか男性の興味は尽きない。そんな衆目の集まる中、一人で酒場のカウンターに座る独身美女。
そこには何かあるのだ。男性はそんな目で美女を見つめて、酔いに任せて接近を図る。でも案外何もないこともあり、会話が面白くない事態が発生する。
そんな時接近を図った男性はどのような態度を示せば良いのか。興味がないと席を離れる勇気があるか、それとも我慢して付き合うか。中には美女の分まで勘定を支払わなければならない事態の陥るケースもある。
アメリカの美女は離婚業を仕事にしている人が多い。資産家と離婚を目的に結婚をして、目出度く離婚できれば資産の一部が手に入る。それを3回も繰り返せば一生食うに困らない。
貴方が美女ならどうする。酒場で男に話しかけられたら、受けるか辞退するか。どちらにしても美女は一般的であり、かつ特別なのだ。
酒巻 修平