芸能人と会った

 知り合いの女性と話していると、「誰々(有名芸能人)と等々力の駅の近くであった」とか言われることが多い。男性はあまりそんな話しはしないが女性が得意満面だ。だがそんな理由が分からない。

 芸能人が私生活を公開する番組もある。大きな家に住んでいてリビングからは雄大な景色が見え、効率良く設計されたダイニングを案内してくれる。中には

寝室の模様も公開してくれることもあって、それなりの視聴率を稼ぎだす。

 その間その芸能人はゲストにも優しく接し、高潔な人格で応対する。だがもちろんこんなことは虚構である。家は本当だろうが、住所は明かさないし、芸能人は演技をしているのだ。自宅を公開するのは仕事の一部だ。真実に反し、人柄の良い所を示さなければならない。

 私もレストランで時々芸能人とテーブルを横にして食事を摂ることがあるが、相手は話し掛けられても鬱陶しいだけだと、関心を持たないことにしている。相手は煩わしいだろうし、こちらも別段芸能人の私生活に興味がある訳ではない。

 その時私ではなくて、女性がそんな機会に遭遇するとその芸能人に興味を持ち、話しかけるまではいかないとしてもちらちらと横目で見るだろう。そうすると芸能人は落ち着いて食事もできない。

 彼らに取って外は仕事場と思わなければならない。収入は良いだろうが、辛い仕事だ。芸能人になるには大きな関門を潜らなければならない。女性であれば容貌が美しいことが最低条件だろうが、その他。デビューする時は新人で回りは全て先輩だ。

 先輩に逆らうと何が待っているか分からない。陰湿な虐めもあるだろうし、時には仕事を干されたりすることも少なくない。この世界は上下関係が厳しいのだ。

それに反社会勢力との付き合いも出て来る。

 そんな過酷な仕事の中で、ファンサービスもやらなければならない。面白くもないのに、ファンのジョークに笑い、絶えず笑顔を見せる。芸能人からするとまるで出来の悪い生徒に愛嬌を振り撒く先生だ。

 それなのにやっとプライベートな時間が取れ、食事に行くとファンではないものの、好奇心を持って見られる。写真を一緒に取ってくれと言われる。サインをねだられる。ああ煩い、嫌だというのが芸能人の心境だろう。

 最近美人、美男子の芸能人がいなくなった。あるいはあまり一般人とかけ離れた高嶺の花は敬遠されるのかも知れない。だから手が届くようで届かない程度の容貌を持った男女が好まれるのだろう。

 一度か二度頼まれて芸能人発掘のコンテストの審査員をやったことがあった。5点満点で採点していくのだが、18歳を過ぎたような女性には一人も候補者がいなかった。大抵4の評点で、2もいなければ1もいない。

 審査員の中には「今ここで水着になって欲しいと言われればなれますか」などと何の意味もないような質問をぶつける審査員がいる。そんな質問に全員「はい、大丈夫です」と答えるに決まっている。

 50人以上の応募があって、私は一人一人に違う質問をするようにしたが、気の利いた答えをする応募者はいなかった。ある一人に「頭が痛い表情、歯が痛い表情、腹が痛い表情を作ってくれ」と頼んだ。

 もちろんできない。私は実はできるのだ。こつは本当に頭や歯や腹が痛いと思い、それを表情に出せば良いのだ。先ず見本を示したのだが、候補者の表情からはどの部位が痛いのか分からない。

 プロダクションは仕事を取るのが専門だが、仕入は下手だ。仕入とは芸能人の発掘だ。人は混血によって頭脳も容貌も平均化してくる。極め付きの醜女もいなくなったし、目を見張る美人もいなくなった。

 だから混血をしていない離島に探しに行けとアドバイスをしてやった。最近沖縄出身の芸能人を散見するが、沖縄ではまだ混血が進んでいないのだろうか。

 もちろん突然変異的に美人、美男子が誕生することもある。だがこれは探しようがない。

 芸能人をやるくらいなら会社を始めて儲ける方がよっぽど簡単だ。それに成功した時の収入が違う。普通の芸能人では思いも掛けないほどの金が稼げる。だから芸能人はそのうちビジネスに手を出し、大体失敗する。

 今日も多くの芸能人は外で一般の人(おばさんが多い)に見られて興味を持たれる。うかうかレストランにも行けない。ラーメンも食べたいだろうし、お好み焼きにも気が引かれる。だがそこは一般人が多い。いやでも高級なフランス料理や馬鹿高い寿司屋に足を運ぶ。可哀想な職業ではある。

酒巻 修平

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