良い医者を探すには

 多くの人が勘違いしているのは医学が病気を治す学問だということだ。残念ながら今の医学は病気を治すことを目標とはしていない。

 医学は病気の現れである症状を治すことなのである。但し病原菌による病気、骨折(病気ではないが体の不具合である)、癌は症状を起こす始原に近い原因が案外明白な病気で、これは治せる可能性が高い。

 例えば肺炎。肺炎は何種類かの細菌の一つあるいは数種が体の中で増殖し過ぎて起こる。癌はアポトーシス(自殺と考えて良い)しない細胞が何等かの原因で発生するもので、これはその発生した部位を取り去れば治癒する。

 もっとも肺炎でも癌でも何故始原的に発生するかは判明していない。誰の体にも肺炎を起こす細菌は潜んでいるのに肺炎を起こす人とそうでない人が存在する。細胞がどうして突然アポトーシスせず癌になるかは分かっていない。

 だが病気が進行する過程でその原因の近くで阻止するから肺炎に代表される細菌性の病気が消滅するし、癌もそうだ。

 医学が何故病気を治すことができず、症状だけに注目しているかは、元々人(他の動物もそうだが)の体がどのように動いているかが解明されていないからだ。

 解明されていない理由は誰も解明する努力をしていないからだ。どうして学者はそうしないのか。それは未知の機構や作用が絡んできているほか、体の作用が複雑すぎ、互いに連携しているからだ。

 例えば筋肉がどのように動いているか。過程だけは分かる。脳のどこかの一部が筋肉を動かそうと考え、その考え(意思)を脳の他の部分が受けて、それが筋肉の動きを指令している。

 そんなことは当たり前と思うだろう。それはそうだが、では脳のどの部分が意思を持ち、何故そんな意思が発生するかは誰か説明できるだろうか。できない。

 そもそも意思とは何かを説明することさえできないのだ。意思は明らかに脳と関係がある。だが脳はどうしてあるいはどのような過程を経て意思を発生させるのか。体の動きの源から未解明なのだ。

 最近漆科の「櫨(はぜ)」の樹液を触り、皮膚に蕁麻疹様のかぶれが出た。それで皮膚科に行くと「これは老化現象ですな」と言う。全くの間違いだが、そもそも老化ということはどのような体の状態かも説明できないのだ。

 人はどうしてある食べ物が美味しいと感じるのだろうか。これを解明するだけでノーベル賞は確実だ。もっと複雑な意識、意思、意志、思考、怒り、哀れみ、愛、恋、などなど脳が関係しているのは事実だろうが、脳がどのような状態にあるとそういう感情を持つのか、解明する努力さえなされていない。

 何故なら解明するには天才の一生を掛けなければならないくらいの大事業だからだ。唯一努力をしたのは300年ほど前に出現した天才のエマニュエル・カントだけだ。

 彼は何とか脳の意識を解明しようとしたが、結局哲学的な観点でしか説明できなかった。

 それはコンピューター的な観点で説明できそうだが、カントが努力したころコンピューターはまだなかったからその理論が利用できなかった。

 脳は多分電気信号を発し、信号の違いで種々の感情をコントロールしているのだろう。だが電気信号はどのように最初発生させるのか、宇宙の始まりと同じように原因と結果のどちらが先か、ぐるぐる回りしている。

それにコンピューター本体は変化しない。人の体はコンピューター的に制御されているとしても、コンピューターと違って人の体の本体自身も変化する。

 コンピューターはデジタル的に動いているし、人の体もそうだろう。だが人の体の造りはアナログ的だ。だから人の体の制御はデジタル/アナログ変換に関係する。

 この程度の大雑把な機構は説明できるが、細部に亘ると巨大な謎が待っている。脳からのデジタル信号を各器官がどのようにして受け、どのようにアナログ変換をして器官を動かしているのか。

 ホルモンは何をどう器官とデジタル/アナログ変換をして関係しているのか。最終的に病気とはどのような状態で原因は何なのかは人の体のデジタル/アナログ変換を解明しなければならない。

 すなわち、現在病気の真の原因は分からないのだ。これが事実だとすれば「分からない」と言う医者が正直で良い医者なのだ。

酒巻 修平

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