大相撲秋場所

 私は中学生のころから大相撲が大好きだ。当時はまだ自宅にテレビがなく、近くのうどん屋さんに行って設置されていたテレビで毎日見た。

 もちろん素うどんしか食べるお金がない。確か15円だったと思うが、幕内が始める4時ころから見始めて、6

 店にはおじさんがいたが別段苦情など言われなかったのを今でも覚えていて、有難いと感謝している。

 当時贔屓力士は先代の朝潮だった。奄美大島出身でもう横綱になっていたように思うが、あるいは大関くらいだったかも知れない。

 一度本場所にも行ったことがある。実際朝潮がまわしを付けて立っているのを見て驚いた。団扇のような手で雲を付くような大男だった。胸には毛が生えていてこれが力士かと感嘆したものだ。

 ライバルは初代若乃花で案外取り口が良かったので分が良く、勝つことが多かった。

 うどん屋に行かない時はラジオで実況中継を聞いた。朝潮が土俵に上がると胸がどきどきして心臓が早鐘を打つように思えた。

 双葉山が引退して時津風親方を襲名していた。朝潮は腰を痛めていて、優勝は数回しかなかったと記憶しているが、兎に角相撲が始まると興奮して何も手に付かなかった。

 大相撲は一時衰退期があって存続が危ぶまれたが、NHKの支えもあって何とか今まで持ちこたえた。

 こちらもだんだん年を重ねて行く。大鵬が活躍したころもよく見た。でも大鵬のファンではなかった。相撲に勝つということだけ目的にしているようで、面白くない。

 一般人には相撲は異次元の世界で、観客が驚くような力の入れ方や技術を披露したが、大鵬は無心に勝つことに専念した。これが私から興味を削いだ。

 朝潮を贔屓にしたが、引退してから贔屓力士はいなかった。佐多山や隆の里の相撲も好きではなかった。でも相撲は好きで毎場所欠かさずみていた。

 その間サモア出身の高見山、曙、小錦、武蔵丸などが活躍する時期があった。曙は貴乃花と良い勝負をしたがヒール役で、熱戦の末貴乃花が勝った時は館内大声援が起こった。

 その後曙は相撲界を離れKワンなどを経験したが今はどうしているのかしら。勝負をしていない時の曙は本当に善人らしく優しそうな人で、好感が持てた。

 その後モンゴル勢が大相撲で大活躍する時代がやってきた。だが朝青龍は勝負していない時も人柄が悪そうで好きになれなかった。

 白鵬が出て来て朝青龍に勝つようになった時はあの朝青龍の憎たらしい顔が歪むのが嬉しかった。

 その白鵬も優勝を重ねるにつれ、不遜になり八百長は多いし、所作が頂けない。日本に帰化して相撲協会に残るようだが、これでまた相撲協会の闇が増えそうで嫌だ。

 鶴竜は人柄が良さそうだが、白鵬に比べると力が数段劣る。そのモンゴル勢もいよいよ衰退期に来たようで、これからはまた日本人同士の相撲が楽しめると思っているが、そうはいかないらしい。

 今の相撲取りには怪我が多すぎる。あのように激しいスポーツなので、怪我は付き物で昔から怪我をした力士はいたが、今ほどは多くなかった。

 今場所の優勝決定戦も怪我に悩まされた力士同士が戦ったし、比較的贔屓にしている栃ノ心も怪我で満足な相撲が取れていなかった。

 怪我の理由は協会も把握しているかも知れないが、どうして予防策を取らないのか。力士を消耗品的な感覚で見ているのか。

 昭和時代の相撲と今の相撲の面白さは違う。今は肉弾相打つというように巨体を相手にぶつけ、相手を土俵の外にやるような単純で面白くない取り口が多すぎる。

 白鵬や鶴竜の相撲はそうではないが、どうしても巨体に物を言わせてまるでアメリカンフットボールのぶつかり合いを見ているようだ。

 そう言えば解説者も立ち合いが重要だとばかり言う。確かにそうだろう。立ち合い一瞬早く相手にぶつかれば大体7割方勝負は決まる。

 技巧を凝らしての相撲はもうない。先代若乃花と栃錦のように案外小兵の力士ががっぷり四つに組んで動かず、相手に先に息を吐かせた方が有利になるなんて手に汗を握る面白い取り組みは消滅した。

 スピードに物を言わせて肉弾をぶつける勝負の仕方はどうしても筋肉や骨を痛める。筋肉をどうかして曲がって使うのか、今場所活躍して貴景勝も自分の攻撃で左胸の筋肉を傷めた。偶然ではない。彼の怪我は必然だ。

 今場所は二流の力士の優勝決定戦で幕を閉じたが、面白くも何ともなかった。白鵬は嫌いだが相撲における体の使い方を良く心得ている。

 それに対する力士は学生相撲出身者が多く、正しい体の使い方を訓練されていない。だから横綱などにはならないだろう。

 悪いが御嶽海や貴景勝は横綱になるには力不足で大関の地位を保てるのも奇跡だ。それだけ回りの力士が弱いのだと思う。

 いつからこうなったのだろうか。肉弾をぶつけ合うアメフト相撲は巨漢が体をやみくもに攻撃の道具とすることから始まったように思える。

 顧みるとそれはハワイ出身の巨漢力士、曙や小錦、あるいは武蔵丸が出現してからだと思える。あれほどの巨漢に対応するにはできるだけ体を太らせてなければならないと親方衆は思ったのか。

 だから取り組み中の体の制御が利いていない。無理な態勢であるいは力を入れる方向が違っても何とか早く攻めなければならない。ここに怪我の原因があるように思えてならない。

 余談になるが、NHKのアナウンサーの能力も落ちた。力士の名前は間違うし、星勘定その他間違いが多すぎる。あれではプロと言えまい。

 何故元横綱の北の富士がメインの解説者なのだろう。解説は当を得ていないし、どうしてもサブの舞の海を馬鹿にする。聞いていて不快だ。

 北の富士は天才であった。もちろんそれなりの努力、苦労はしただろうが、同じ努力と苦労をしても関脇止まりだった力士の方がより考えただろうから、解説も面白い。

 今場所はだから日間ほどしか取り組みを見なかった。面白くないのだ。相撲協会はここら辺で真剣に元から日本の伝統武道とはいかなるものか考え直してもらいたい。

酒巻 修平

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