夫婦の認知症はなぜ「うつる」と言われるのか
人の体は使わなければ退化する。病気で入院すれば筋肉は力が入らなくなり、リハビリをしなければならないことも多い。
脳も体の一部であればこの原則は曲げることはできない。人の脳は身体の中では後から発達して所なので、まだまだ完成しているとは言い切れない。すなわち未熟なのだ。
赤ん坊は生まれつき歩くことができないのと同じように脳はすぐには完成した状態にならない。すなわちある意味脆弱な体の器官なのだ。
その割に大きく広範囲な作業をこなさなければならないので、脳にはいつも大きな負荷が掛かっていると考えるのは自然である。
人の体は動かさなければならないのでどうしてもエネルギーが必要だ。エネルギーが枯渇するか、不足すると満足な作業ができないのは機械と同じである。
人の体のエネルギーは血液で得られる。だから血液が充分に行きわたらないとその部分の作業が捗らない。
どちらが後か先か作業が捗らないとますます血液が回らなくなる。これでは鶏が先か卵が先かのような理論になってしまうが、それが本来の体の機構である。
認知症は脳の不活性から起こると考えられる。だとすれば脳に充分な血液を供給してやればそんな不活性は防止できるはずだ。
それが案外難しい。ストレスがあると解決できないストレスを解決しようとして脳に供給する血液がそこにばかり集まる。
結果脳の他の部分で各器官や筋肉などを動かすエネルギーたる血液が不足する。免疫性能が低下し、弱い臓器などが機能不全に陥るし、筋肉の動きも悪くなる可能性が高まる。
ストレスは解決できない障害だ。逆に何かを成し遂げようとすると多くの血液を必要とするが血液は大いに流れる。謂わば逆ストレスだ。
だから何かに夢中になっている時は体の調子が良い。だが逆に頭の良い医師や教授、弁護士などいつも同じことを考えていると思考を司る脳の部分が肥大化するので多くの血液が必要だ。
ところが考えることを止めるとそこに行く血液が少なくなり、その部分の作用に滞りが発生する。
同じ量の血液も流量が違えば脳に行きわたる血液量は違ってくる。朝起きて風邪や便秘、胃炎、患者が長く罹患している病気とも言えない症状を呈している人を診察していると医師はあまりものを考えない。
いつも決まった事を話し、同じ薬を処方する。これでは脳を充分に使っているとは思えない。だからこういう頭脳労働者に案外認知症が多い。
主婦もそうだ。朝起きて朝食を用意し、掃除、洗濯をするとテレビを見る。毎日同じことの繰り返しは脳の活性化を阻害する。
趣味を持ち、できればそれに没頭して新しい工夫をする。それができなければ大いに悩み、何とか解決しようと努力をする。ある日小さくても開眼がある。
こんな時は多いに脳を使うし刺激される。血液の循環速度が速くなり、生き生きとした生活ができる。
動物は子孫を残す存在で、子孫を残す以外に生きている目的はない。高等動物では少しは頭が発達しているので、遊び、主人の帰りを待つなど脳を使うことを喜びとしている。
人は極端に脳が発達した動物だ。その発達した脳を使わなければ脳は不活性になり不必要になる。それが認知症の原因だ。
特に男には問題が多い。妻が認知症になると夫は家庭内で話す人がいなくなり、自分自身も認知症に陥る。それが嫌なら漢字検定の,3級でも受験して脳を使えば良い。
碁、将棋、麻雀、絵、カラオケ、なんでも良い。できれば1年に一度は新しい趣味なり実益を始めるともっと良い。趣味を極めることにより脳をより使うことになる。
そうすると脳に血液が余計に供給され認知症などになる確率が大いに減少する。私も今年は世界経済の研究を始めた。ネットを見ればその問題で話し合っている人が大勢いる。そんな人と議論を交わすつもりで見ていれば脳は活性化する。
酒巻 修平