高齢ドライバーの事故

テレビではしばしば高齢者の車の運転で悲惨な交通事故が発生していることが報道される。だがここでもテレビの報道が真実かどうかを見極めなくてはならない。

 過去10年間に交通事故の発生件数は約半分に減少している。死亡事故だけを取り上げても同様だ。

 事故を起こす割合を見ると年齢で一番多いのは16~19歳が突出して多く、70歳代の倍をはるかに超えている。二番目に多いのがこれも若者で、20~29歳だ。

 他の年代はそう変わりがない。80歳代が少し多いかなという程度で、70歳代に目を向けると他の年代とはほとんど変わりがない実数が示されている。

 テレビを見ると老人の事故が大きく報道されて一般の視聴者は老人はもう車の運転は見合わせた方が良いと思ってしまう。だがこれは錯覚である。

 というよりテレビ局が故意に錯覚を起こさせるような報道を行っているのだ。テレビ局が目指しているのは少しでも高い視聴率を獲得することで、視聴者に真実を報道するという本来の目的を忘れてしまっている。

 だからと言って老人が気を付けないで車を運転しては良いということにはならないが、車がないと不便な地域に住む老人の生活を誤った解釈で不便にすることは如何かと思考する。

 こんな話題だけを見てもテレビを初めマスメディアの不誠実さがを垣間見える。政治問題、経済問題などで解説者が登場して意見や分析を述べるが、あれもテレビ局が用意した原稿に沿って発言するだけであろう。

 更に未来予想になるとそれが近未来であっても、正確な分析や統合の結果などではないのを我々は知るべきだ。彼らの予想に従って行動すると痛い目に会うのは目に見えている。

 未来予想は現在の事実と違って責任を取る必要がない。それは競馬の予想と大きく変わるところがないと判断しなければいけない。競馬の予想についてはたいして当たらないと馬券を買う人は考えているので大きな被害が起こらないが、日本や韓国、中国の経済の予想を頼りに投資行為など一切やってはならないのだ。

 一番信頼のおける経済評論家の一人が何年か前日経平均が20000円を超えたときに述べたことを思い出す。今でもネットにはその時の言葉が残っているが、彼は20000円を単なる一里塚で、30000円を目指してすぐにでも上昇すると言っていた。

 もちろん大外れである。その後日経平均は20000円を割り込み、その予想を頼りに投資した人は大損をした。もちろん投資のプロはそんな予想など信じていない。

 話を元に戻すと老人の交通事故を報道する背景はこんなところにある。テレビで放映されている事故は現実に起こったことであるので、この事故を単体で見るとテレビ局は虚偽の報道をしているとは言えない。

 だが交通事故の報道は事故の死者が多いとか、特徴的な事故を取り上げる以外に視聴者の関心を得ることができない。老人の事故を重点的に取り上げることで視聴者は「またか」「老人は免許証を返納すれば良いのに」と勘違いしてしまう。

 テレビ局はそんな勘違いを誘導するのが目的ではない。頭にあるのは視聴率だけだ。視聴者が「ああ、またか」「被害者は老人が運転した所為で不幸な目に会った」と他人事ながら嘆き、間違った意見を持つなど感心を持ってもらいたいのだ。これが少しでも視聴率を上がるのに役立つ。

 平成28年度の事故件数は50万軒程度ある。どうしてある特定の老人の事故だけを取り上げるのか、目的はここでも明白である。因みに最近事故件数は年々減少している。

 この理由の分析も簡単ではない。取り締まりが行き届いていると警察は言いたいだろうが、それだけが必ずしも理由ではない。運転者の技術が向上したことも原因であるし、若者の車離れ、総運転距離の短縮など多くの要素が重なり合って幸いにも事故が減少しているのだ。

 「象は大きい動物だ」ということは真実である。しかしこの言葉だけでは象という動物の全体像を表していない。ある事象の一部だけを取り出し、誇張して報道するのは真実を伝えているとは言い難い。それを故意に行うと虚偽ということになる。

 我々はそれを踏まえてテレビや新聞を見なければならない。マスメディアの報道は一つのバラエティ番組で、フィクションと真実の混合体だ。ということは真実ではないと考えなければならない。本当の真実などマスメディアでは発表されないのだ。

酒巻 修平

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