テノールの発声練習

 一時コーチがいなかった時期があり、調子が悪くなるとなかなか脱出できない。それで仕方なく今はコーチを人持っている。

 コーチ料は一人が1時間10000円、もう一人は7000円。大体月に一回から二回見てもらう。私がコーチと言ったのは歌を歌うのにはまずスポーツ感覚をもたなければならないと思っているからだ。

 特にテノールでは高音を輝かしく、遠くまで届かせ、奥行きの声で歌わなければならないからだ。これにはどのように体を使うかによっている。声帯のポジション、息の吸い方、吐き方、保持の仕方は音の生産方法で当然だが、声帯で生産された音を楽音にするためどこに響かせるか考え実行しなければならない。

 どのスポーツでも頭で考えた複数の筋肉のバランスの取れた使用をしなければならない。歌を歌うのもこれと同様だ。歌は音の芸術を目指しているが前以て製作された楽器というもとがないので、その時その時で自分の体を楽器にしなければならない。

 往年の世界的な歌手でもできが良い時もあれば、どうも良くない時もある。絶えず良い音を出すのはとても難しい。だから音の調整をするコーチが必要なのだ。

 練習はほぼ毎日行う。息の吸い方と吐き方、保持の仕方を完璧にしたいが、そうはならない。息は鼻から吸うのが良いとされるが歌のフレーズによっては間に合わないことがある。そんな時は口も使う。

 最初は4拍ずつ4回、それから2拍、1拍、半拍、8分音符、3連、16分音符をブレスし吐く。この時には音は出さない。すなわち声帯は閉じていない。ブレスの練習だからだ。

 それからハミングを少しやり、「あいうえお」で声を出して音階を歌う。最後は「あ」で行うが、大体C3くらいからC5まで行う。もっと高い音も曲によっては出て来るが、私の年ではもうそんな歌は歌わない。

 声帯は喉の下の方に固定する。F#くらい以上の高音になると声帯を支える骨が少し縦に起きる。これをアクートというが、こんなことを考えずに自然に出てしまう幸運な人もいるが、大概の歌手は少し考えてポジションを整える。

から上の頭蓋骨であり、日本人の歌手はこれが苦手だ。多くの歌手が口の中を響かせている。

 口の中には筋肉や粘膜など響きにくい部分が沢山あり、そんなところに響いた音は輝きが足りない。高級なグラスに響かせると音が澄んで乾いた音が響くが例えば陶器を響かせると音のクリア度が下がる。楽音は主として頭蓋骨に響きその影響が体全体に及ぶ。

 肩の骨もそうだろうし、胸骨にも響くだろう。だが音が必ず骨に響かせなくてはならない。何故なら体で一番堅いところは骨だからだ。

 傍で聞いていると素晴らしく大きな声だと思うが、大劇場で聞くと声が飛んでこない歌手がいる。こういう声を近鳴りと言って、声が筋肉や粘膜に主として、響かせているのだ。すなわち口の中に音が響いている。

 F#から上の声はアクートと言い、歌えるようになるまで何年か掛かることもある。テノールを歌うのは特別の技術が要ると称するのはこのことである。そこからAまでが一括りで上に従って輝かしい声になる。Bはさらに頭頂部に響かせなければならない。

 HとC(5)を輝かしく歌うことがテノールには求められ、それには頭蓋骨全体に音が響かせなくてはならない。ということは音と息が完全に分離していなければならない。

 息は声帯を動かす動力としての働きをするが息の音が聞こえてはならない。音が濁るし、高音が出なくなる。そんなことを意識していない歌手もいるだろうが、分析してみるとそういうことをしているのだ。

 本来は最高音を歌う時も余裕が欲しいが、なかなか難しいことのようだ。筋肉の適正な使い方をすれば達成できるのだろうが、だれしも完璧を求めるのは無理だ。

 胸は音に関係する重大な部分である。できるだけ大きく膨らましてその状態を保持しなければならない。そうすると声が長く保持できる。

酒巻 修平

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