金の国アメリカ

 アメリカにおける金の威力は日本の何倍もあるようだ。これを証明する面白いエピソードがあるので、紹介した。

 何時だったかサンディエゴへ仕事で行った。私が社はアメリカに購買担当の契約アメリカ人がいて、その人と一緒だった。面白い商品を見つけて、それを輸入するためだ。

 そのアメリカ人購買担当は商品の発掘に付いては有能だが、インディアンの妻は働く能力がなく、一日中ゲームをして家でぶらぶらしている。だからその男も経済的に余裕がなく、唯一の収入は我が社からのコミッションだけだった。

 最低支払額600ドルで仕入れ商品に対して5%を支払う契約なので、一緒懸命働かなくてはならない。だから絶えず新しい商品を探している。取引先へ電話を掛け、展示会にも出かける。関連のあるお店にも絶えず出入りして情報を集めては私に連絡してくる。

 その男には相当儲けさせてもらったので、私が仕入の商談にアメリカに行く時、ランチ、ディナーは全て私が支払う。その男には私に食事をおごる資力がない。

 それに関しても面白い話があるので、後程話す。さてサンディエゴで仕事が思ったより早く終わり、夕食までにまだだいぶ時間があった。その男の提案でポールダンスを見にいくことにした

 入場料は15ドル、店の名前は「BODY SHOP」という。二人分30ドルを支払うと手の甲にスタンプで入場料を受け取ったというスタンプを押してくれる。これは生涯有効で、次に行ってそのスタンプ印を見せると15ドルは取らないという説明を受けた。

 さて場内に入ると14,5人のアメリカ人がいて、すでに始まっている。客は背広姿の紳士、労務者風の男、アジア人旅行者(我々もそうだが)、しかめっ面した弁護士風の男など色とりどりの客が熱心にダンスを鑑賞している。

 ダンサーはもちろん衣服は着ていない。しかしとても美しいスタイルをした美人揃いで卑猥であるとか汚い感じは一切しない。ポールに捕まって体をくねらせあまり上手でない踊りを披露している。

 ステージ際に座った客はそれぞれ食い入るように見ていて、中にはチップを置いている客の前もいる、そんな客の前では特に長くダンスを披露して体を見せびらかす。チップはそれぞれ1,2ドルくらいだ。

 我々も一番前の席に座った。後ろの空スペースではダンスなど見ないでビリヤードに興じている変わり者の客もいて時間を潰すには気楽な雰囲気だ。私は最初チップを置かず見ているとこちらにはダンサーはやってこない。

 そこで物足りないので、1ドルチップを置いた。(一段高くなったステージの端に置く)すると10秒ほど我々の前に来てサービスダンスをするのだ。面白くなって今度はドル置いた。すると前でダンスをする時間が長くなった。20秒か30秒、こちらの顔を見てコケティッシュな表情を見せる。

 次はためしに5ドル置いてみた。するとダンスをする間の1/3くらいの間は我々の前でダンスをするのだ。このようにチップの額でさービスを完全に別けている。この時金の力をまざまざと見せてもらった。

 ところで次の日もサンディエゴに行く仕事があり、また「BODY SHOP」に立ち寄った。昨日のスタンプはまだ消えていないので、15ドル、二人分で30ドルは支払わなくても良いと思い、手の甲のスタンプを見せた。なにしろ一生涯有効だと説明を受けていたから、堂々たるものだ。

 するとやくざ者らしい入場係の男はスタンプが消えかかっていて見えないからもう無効だと支払いを要求する。逆らっては怖いから仕方なく30ドル払って入場した。その時その男は「THANK YOU」と笑顔を見せた。ユーモアたっぷりだ。

 不思議に次の日も仕事ができてサンディエゴに行く羽目になった。そこで私は安物の眼鏡を売っている店で近眼鏡を買った。連れの男(BOB GORDONという)は何故そんなものがいるのかと訝し気だ。値段は確か3ドルくらい、アメリカは物価が安い。

 我々はまたBODY SHOPへ向かった。もうそんなポールダンスには興味を失くしていたが、何とか復讐してやりたい気持ちがあった。店につくとくだんの男が立っていたので、私は手の甲を店ながら買ってきた眼鏡を渡して。曰く「Your eye sight is too short」と言うと男は意味がすぐには解せず、怪訝な顔を見せたがすぐ大笑いをした。私のジョークが通じたらしい。我々は無料で入場して復讐を遂げた。

 さてある日BOB GORDONに家へ食事に来ないかと誘われた。聞くと妻が食事の支度をすると言う。私は不吉な予感がしたが、誘いを断るのは失礼なので、受けざるを得なかった。

 BOBがホテルに迎えに来て仕事に行く段になって聞いてみた。奥さんは今何をいているのかと。するとBOBは俺たちの食事の用意をしていると答えが帰ってきた。まだ朝10時だ。ふーんこれはどういうことか意味を解することができず、忘れることにした。

 仕事が終わったのが5時ころか。BOBはある安物スーパー、確かCOSTCOだと思ったがそこによってビールを2ダース買った、代金は金もないのにBOBが支払い、どういう風の吹き回しかと思ったが黙って見ていた。

 さてそのビールを持ってBOBの家に行くと今日奥さんはゲームをしていなくて、何やら台所で食事の支度をしている。我々のディナーの用意だろう。

 料理が出来上がるまでビールでも飲もうと先ほど買ってきたビールを二人で飲んで明日の仕事の段取りを話していると食事の用意ができたと奥さんが誇らしそうに呼びにきた。

 それで我々はダイニングに行くと確かに料理が出来上がっていた。直径50cmはあろうかという大皿が二つ並べてあり、一つにはフライドチキン、もう一つには茹でたじゃがいもが山盛り乗っている。だが料理はそれだけだ。朝からずっとそのフライドチキンとじゃがいもを茹でていたらしい。

 BOBも奥さんもさあ食べろと私に先にフォークを取らせて誘う。結局私は大きなフライドチキン3つとじゃがいも2つを食べて終り。後のものはどうするのかと聞くと、捨てると言う。何ともあきれ話だった。 それからはBODY SHOPには行かずBOB GORDON の家の食事は理由を付けて断ることにした。

酒巻 修平

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