メキシコの警官

 発展途上国という言葉は後進国に失礼だから使っている。だがかつての後進国が本当に発展途上国かどうかは疑問である。経済だけが発展しても、モラル、文化、政治と色んな面で今後発展していくことが予見できるケースも多い。

 私がビジネスで回った数々の国ではこの発展途上国という言葉が本当に当てはまるかどうかはその国の人たちと政治家の精神次第だと思える。

 そんな国では公務員(下級)の給料もまともに払われないことがままある。メキシコもそうだった。警官は交通違反を取り締まるのも業務の一部だが、それは交通の安全を期すためのものだ。これが有名無実になっている。

 会社の人の友人がメキシコにいるというので、何か輸入するものはないかと商品を探しに出かけた。だが私の発掘の腕が悪かったのか、これと言った商品はなく、逆に輸出する物は沢山あった。

 すなわちこの国では必要な物は種々あるが、外貨が乏しく輸入できないのだ。日本の若者はすでに経済大国になった日本で働いているので、会社はきっちりと給料をくれるし、社員に不適当な扱いをするとブラック企業だと言われるほどだ。

 だが諸外国を見るとほとんどの中小企業がブラック企業である国など掃いて捨てるほど存在する。私が訪問した中でもインドネシア、フィリピン、中国、などは典型的な国だ。

 だがどこの国にも富裕層がある。それは政府か関係機関に勤めるか何等かの繋がりがある人たちだ。そんな国は先進国と言えるかどうかはなはだ疑義がある。中国など政府高官が国家に所属すべき大金を私物化し、海外の自分の口座に隠し持っている。

 それを罪に問うのは難しい。中国の習は何とかそんな行為を取り締まろうとしているが、自分自身もやっているようで、自己矛盾だらけだ。そのうち内部崩壊するように思えてならない。

 日本ではモラルがある程度保たれているがそれでも政府高官の天下りなどやはり醜く腐敗した状態はなくならない。いつの日か優秀な人がモラル状態も優秀になるのだろうか。それとも優秀な人はモラルが低いから優秀なのか。

 さてメキシコの話しに戻ろう。ある日曜日紹介してもらって人と古代遺跡を見物に出かけた。道路は渋滞していた。それで迂回して横道に入ろうと右車線を通過したところで、突然パトカーが現れ違反切符を切られた。

 それだけなら何と言うことはない。日本人にすれば少額の違反金を収めればそれで終わりなのだが、運転している人(紹介してもらった人=これからA氏と呼ぶ)は私に「こんなのすぐもみ消しますよ」と警官に近づいた。

 警官も職務を終えたのだからまた違う職務に復帰すれば良いのに、そこで動かない。A氏は「まあ500円だな」と言いながら警官と話しをしている。ものの数分だったと思う。A氏が帰ってきて手には違反切符の写しを持っている。

 警官の行為で国は反則金を徴収できなくなった。すなわちA氏からすると500円で反則金を免除してもらったのだ。もちろん警官にはそんな権限はない。その日警官には500円の副収入があった。これで家族が食べれる。

 私は唖然としたが一計を案じた。遺跡まで行く人が多いので道は混んでいる。普通に行けば時間も掛かる。そんなに掛かるのだったら行かなかったのにと後悔してももう遅い。

 そこでA氏に通訳をしてもらった。何しろスペイン語など私はできない。「遺跡まであんたが先導してくれ。報酬は10ドルだ」と持ち掛けたのだ。交渉が上手くいくと渋滞を回避することができるだろうと私は思ったのだ。

 私のモラルも人に言えたものでないとても人柄の悪いことだが、若い私はやんちゃだった。駄目もとと思っていたが警官はその申し出を受けた。

 そして我々は30分ほどで遺跡に到着した。我々はその警官の電話番号と名前を聞いておいた。警官はこんなことならいつでも呼び出してくれと逆提案をする始末。

 その後A氏がその警官を利用してかどうかは分からない。私のメキシコビジネス旅行はメキシコの腐敗ぶりの確認と遺跡巡りの観光旅行に終わってしまった。同じような体験が他の国でもあるが、それはまたの機会にしよう。

酒巻 修平

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