高級品と低級品

 30年ほど前、着るものに凝ったことがあった。一般の背広なども買ったが、時には頑張って高級品も買っていた。

 高級品は一般のものと比べて10倍くらいの値段がする。でも良くできているし、デザインや風合いがやはりとても良い。

 一般品は大体3年くらいで駄目になり、勿論無理すれば使えるが、貧相に見えるし、そこら中にほつれが発生する。

 それで仕方なく新しいものを買うのだが、ある時ふと考えた。3年に一度は新しいものを買わなければならないのを我慢して、高級品だけを買うことにした。

 それから30年。そのころに買った高級品はいまだ新品のようで、私の寿命が尽きるくらいまで使えそうだ。

 仮に高級品が30万円するとしよう。一般品はだから1/10の値段で、3万円。一般品を3年に一度換えると30年で30万円。結局同じ合計を支払うことになる。

 それからどんなものでも高級品を買うことにした。支払が大変だと思うだろうが、そうではない。合計すると長い間には高級品の方が安上がりだ。

 それが分かってからは何でも高級品を買った。スクリュードライバーも冷間鍛造のものを買うと、ドライバーの先は一切歪まないし、同じく冷間鍛造のネジを買って使っておくと、ネジ山が馬鹿にならない。

 金額と品質は正比例しているのだ。安物のテーブルでは合板の上の部分が必ず剥げてきてそのうち使えなくなる。

 今は使い捨て文化の時代だがそうでない商品もある。電灯もLEDは高いが、30年も持つなら、それの方が却って安上がりで。

 まして年を取ると電灯を変えるのができなくなる。業者を呼んで変えてもらわなければならない。

 吹き抜けの場所だとどんな若い人でも脚立の大きいのがないと無理だ。高いものは使っていて気分が良いし、ちょっとリッチになった気がする。

 私は決して裕福ではない。だが心掛け次第で高級品も購入することができる。最初に高級品を買うまで何かを節約しなければならないが、買ってしまうともう再度出費はない。

 そんな考えを拡大して考えると人材の雇用もそうだ。低賃金の人を雇うのと高賃金の人を雇うのではどちらが得か、決まっている。60万円で雇用した経理担当者は30万円の月給の人の3倍以上働く。

 もっと考えると非正規労働者は雇用しない方が良い。あるいは正社員に登用できそうな人を雇って、約束より高い給料を支払ってやがて正規社員にする。その人は会社に愛着を持つだろう。

 非正規の人はすぐに辞める。そうするとまた雇用に費用が掛かり、結果的には会社は損をする。

 今大きな会社では株主を優先し過ぎて、社員の収入を削る。誰が考えたことかは知らないが、これは会社の損害だ。

 株主など流動的で、ある程度優遇しておけば良い。誰が会社に利益をもたらすのか考えた時、それは株主ではないことが明白だ。

 会社が倒産した時株式は払い戻す必要がない。そのため資本金で会社の資金繰りをする。でも現在は会社がまともなら銀行は融資をするのに躊躇しない。株式で運営資金を得るより銀行から融資を受けた方が、後腐れはない。

 社員を大切に思うなら、定年制度も要らない。もちろん若い人が役職に就くのは少し遅くなるだろうが、会社全体がそうあれば、収入の面で考えて上がればあまり文句は出ないだろう。

 高いものは長持ちして結局得をするのを私は洋服で学んだ。だから社員にはできるだけ高給を支給することにしているし、年齢による定年制はない。

 「働く気がなくなった時と、止むを得ない事情(例えば病気)がある時」には辞めてもらう制度が我が社の定年制である。

 もっとどんどん給料を上げて働いてもらおう。だが会社の利益具合も勘案しなければならないのは当然だ。そうしても会社に報いない人はすぐに辞めてもらえば良いと思うのだが。

酒巻 修平

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