忙しいを連発する人
何がそんなに忙しいのか口を開くと、「忙しい」を連発する人がいる。特に会社の経営者に多い。
経営者であれば自分で時間繰りを立てることも可能なはずなのにどうしてそんなに忙しいのだろう。
たまにはアポが重なって確かに忙しいこともあるだろうが、一年中忙しいとはどうも不思議で仕方がない。
そう言われる度にその人は「俺は無能だ。無能だ」と言っているように聞こえる。中には営業と称してゴルフを1週間に一度は行く人もいる。
大切なお客さまを訪問して、日ごろの愛顧を感謝することも必要だろうが、そんなことがしょっちゅうあるわけではない。
経営者は概ね社長である。だから社長には社長の仕事があるはずで、比較的小さな仕事は社員に任すべきだと思う。
そんなに社長が忙しければ重大なトラブルが発生した時、どのような対処するのか。時間がないのではないか。
だが社長は何とかトラブルを解決する。とすると何か他の仕事を止めてトラブルの解決に全力を尽くすのだろう。
その止める仕事までやるからいつも忙しいのだと思える。あるいは「忙しい」というのはジェスチャーで、心の中では相手と時間を過ごすのを嫌ってそう言っているだけかも知れない。
だが現実に時間が詰まっている人もいるだろう。今は人手不足だから、人を雇用するのは困難が伴う。仕方なく社長や経営者自身が仕事をしなければならないこともあるだろう。
だが人に「忙しい」と聞かせるのはどうだろうか。忙しいという漢字を分解すると「心が亡くなっている」と書くではないか。
「忙しい」人の場合、人が仕事をコントロールするのではなく、仕事が人をコントロールしているのだ。
「忙しい」を連発する人を観察していると、やるべき仕事を逆にやり、連絡を事前に取らないで時間を無駄にする。
仕事を忘れる。アポに遅れる。ある事案に関してその場限りの調査ですまして、後々の参考にしない。勉強はしない。そんな無駄な時間や後のことを考えての使い方をしていない。
「今日は先約が入っています」は良いだろう。これは仕方のないことで、時間をずらせば良い。
病院などは「忙しい」の天国だ。医師は確かにずっと仕事をしている。だが病院は患者の時間を無駄にすることには無頓着だ。これは医師の怠慢ではなく、病院の段取りが悪いのだろう。
予約をしても何時間も待たされる。過去の経験から一人当たりの診察に必要な時間を割り出すことができるはずだ。だが患者は長時間待たされることに対して苦情を言わないから病院はそれに甘える。
地方自治体ではデータのコンピューター化が済んでいると思われるのに、住民票を所得するのに15分くらいは待たされる。あんなのは1分もあれば出力できるのではないか。
逆のケースもまたある。有名なラーメン屋さんでは客が行列を作って店に入るのを待っている。戦後間もなく、物を買うのに行列を作った世代には理解できない行動だ。
何もそこのラーメンだけが美味しいわけではない。他にも名がなく美味しいラーメンを食べさせる店があるのにそこに行列を作る。あれは行列を作るのが楽しいからだろう。それは趣味の世界だから、他人がとやかくいう筋合いではない。
「忙しい」を連発する人が経営する会社とは取引がどうも上手くいかない。だからそんな人は最初からできるだけ取引をしない。こちらの時間が無駄になるだけだ。
酒巻 修平