フィギャースケーターの選手寿命

 かつて野球の長嶋茂雄氏がマイク・タイソンと対談した時、マイクに「そんなに若くて人生の頂点を極めてしまうと後の人生はどのような精神で過ごすのか」というような質問を投げ掛けた。

 マイクの応えは覚えていないが当時マイクはまだ20台の若者だった。確かに20歳代の若者が急に社会で注目され、自分自身の頂点を極めると後の残る時間は一般人の老後に過ぎないだろう。

 それはマイクが職業としているボクシング以外でも、スポーツ選手が陥り、生きていく上での困難に違いない。

 クーベルタンがオリンピックの開催を提案したとき、彼はオリンピックをアマチュアのスポーツと捉えていた。

 アマチュアとは他に職業ややることがあり、熱心ではあるが余暇としてスポーツをするという精神の上に立っている状況である。

 画家という職業を見てみると、年齢が上になるに従って画業がだんだん高みに登っていく。

 葛飾北斎は90歳になればもっと良い物を作れると宣言し、さらに100歳にはある頂点に到達するだろうと自分の画業の行方を予言した。残念ながら100歳には至らなかったが、確かに若い北斎の作品より、年齢を重ねた時のものの方が良いものが多い。

 体だけを比較すると人は他の動物に劣るところが多いだろう。だが頭脳は他の動物を圧倒しるくらい素晴らしい。

 ところでフィギュアスケートの日本選手権が現在行われている。女子では紀平が優勝したが、世界を見渡すと興味深いというか残念というか、もっと若い選手が世界の表彰台を独占している。

 メドベージェバという若い天才スケーターが出現して観客を驚嘆させたが、その後ザギトワがすぐに王座に就いた。メドベージェバが王座にいた時期は短く、次回オリンピックへの出場さえ期待薄だ。

 王座を奪ったザギトワも紀平に追い越され、紀平もロシアの若手の3人娘には太刀打ちできない状態が現在だ。

 今女子競技会で表彰台を独占するのはそのロシアの若手の選手だ。ではメドベージェバやザギトワはどうなっていくのか。4位、5位に甘んじて競技を続けていくのか。

 それとも早々に引退するのか。あまりにも短い王座であったし、王座にあった若い選手が低い成績で満足するほどの精神を持ち続けられるのか。

 そう言えば紀平の王座も短かった。ザギトワから王座を奪ってから若いロシア選手に追い越されるまで1年あっただろうか。」

 3人の若い選手もいずれ早い時期に王座を奪われるだろう。3人は今16歳だったか、ザギトワは17歳。こんな早すぎる人生の頂点を迎えるのはどういうことだろう。

 長島茂雄氏が憂慮したように頂点を極めた後は余生と変わりない。そうすると競技の団体の役員への道を見つけようとする選手も多いだろう。

 そんな選手にはまだ豊かな精神が宿っていないだろう。若くして王座に就き、あっという間にその座を明け渡す。競技だけに明け暮れる時期も短い。

 そんな選手は競技団体という組織においても頂点を目指すだろう。だがそこには華々しい自分の姿を観客に見せることはできない。

 どうするのか。権力を行使し、中には団体を通じて金銭的な欲望に走る人が出て来る。あるいはそんな人が大勢を占める。

 だから競技の点数を操作することで金銭を得るのだ。オリンピックを誘致するのに日本は1億円支払ったし、韓国の金妍児のように金で点数を買い、それを売った審査員が大勢いた。

 そんな現象はあらゆるところに見られる。大相撲などはその典型的な例である。

やはりスポーツはアマチュアが行うべきではないのか。オリンピックで金メダルを惜しくも逃した選手が却ってその後の人生で活躍しているように思える。

酒巻 修平

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