道徳が支配する世界

 人が農耕を始めるころからか、人と人の間に上下の関係ができた。能力や富を有するものは他を従え、やがて武力を持つに至った。

 一つの国は自国の欲望なのかトップに君臨する人物の私利からか、より多くのものを欲して他国を支配下に置くようになった。

 これには武力が必要で、ようやくそれが下火になったのはそれから5,6000年経た第二次世界大戦の後である。

 しかし武力が全てなくなったわけではない。ロシア、中国、アメリカは大きな軍隊を持ち、国家予算から多額の資金を武器などの購入につぎ込んでいる。

 大国は疑心暗鬼に陥り、他国が戦争を仕掛け攻撃する可能性を絶えず怖れている。

 だがこのところ風向きが変りつつあるようにも思える。武力から金力への移行である。それは一つには大国同士が戦争を始めると勝利した国にも多大な被害が及ぶということを実感してからだ。

 核爆弾を被弾すると都市は全滅するだろう。敗戦した方の国も敗戦前に核爆弾を自動的に投下するかも知れない。これは戦勝国に取っても大きな被害だ。政権は批判され、崩壊するだろう。

 それに経済的な疲弊も招く。戦争をすれば武器を失うことも多いのでそれを補充しなければならない。

 アメリカはベトナム戦争で国力が大きく低下した。それを中国は見ているから、自国がその轍を踏むのを避けるだろう。

 仮に核爆弾を使用しないとしても中国がアメリカと戦争を始めるとは思えないし、アメリカも戦争を回避するだろう。

 第二次世界大戦前日本は大国であったが、敗戦により5等国という烙印を押され、経済は疲弊した。その上に賠償金まで払わされ、0の状態から国作りをやらなければならなかった。

 アジアにおける覇権など求めず、スイスのように永世中立国になっていたら、日本は今ごろどのような状態になっていただろう。

 アジアの国々の独立は日本のお陰という理論もあるが、それはさておき、日本は超大国になっていた可能性がある。

 世界は戦争での経済的な体験を通じて大規模な戦争をもうしないと決意したと思われる。

 だがそんな中でまだ自国の領土を拡充しようと考え、行動している国がある。中国とロシアだ。

 この二国の特徴は政治が独裁者によってなされているということだ。それを阻止するのにアメリカは武力に訴えるのではなく、経済的に痛み付け、野心を封じ込めるように動いている。

 一段落的な合意が米中の間で最近行われたが、これはどう見てもトランプが大統領選挙に勝つまでの一時的な方策に過ぎないように思われる。

 トランプが再選されれば再度経済摩擦が起こることは必定だ。世界の歴史を振り返れば誠意のない独裁者たちが長くトップにいることはないことが明白だ。

 この金すなわち経済を武器にした戦争(これを冷戦というらしい)はしばらく続くだろう。

 国際連合という奇妙な団体は常任理事国という対戦の戦勝国的な国を中心に結成され、それらの国だけが決議の拒否権を持ち、それを行使すればどんな決議も採択されない。

 それをアメリカなどが嫌がり、いずれ国連は機能麻痺に陥り、やがて今のままの制度では消滅するだろう。

 アメリカや日本が資金を拠出しなければ自動的に閉鎖に追い込まれる。アメリカはすでにそんな構想を持っていて、少しずつ実行に移しているようである。

 大体常任理事国だけが核爆弾を持つことができるなどという馬鹿らしい制度に賛成する国は当事国以外にはないだろう。

 さてそんな金による戦争がいつ終わるか分からないが、どんな形の戦争も無くならないのだろうか。

 日本は江戸時代まだ階級制度というものが存在していて、民主主義による政治は陽の目を見なかったが、この時代、それぞれの階級では高い道徳観念が存在していた。

 武士には二言がないとか商人は長年良く働く従業員にビジネスを分け与える、農民は田畑に対する水利権を互いに融通しあうなど、今から振り返るととても麗しい国だったようだ。

 もちろん小さな諍いがあったろうが、それらは大勢に影響がなかった。徳川幕府が経済の仕組みを公平に組み立てることをしなかったし、自己の利益を偏重し過ぎたので、崩壊したが、良い時代でもあった。

 言いたいことは戦争や冷戦を乗り越え、道徳観が支配する世界が作れないかということだ。これも人が努力すると実現可能だと思える。それを世界で主導するのは日本ではないか。

酒巻 修平

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