人生の夢を叶えれば?

 私にも色々夢があった。大学を卒業して、結婚をし、子供を持つ。できれば自分の家が欲しい。

 だがこれは今の日本の社会では夢ではない。当たり前の人が当たり前に実行する計画が実現しただけだ。

 夢とはもう少し大きい物事を成し遂げることだ。絵画を描くことに興味がある人は日展に入選あるいは特選する。大きな企業を構築する、芸能人になって有名になる。

 だがそんな夢も実現する人は多い。その人に取ってそれは我々が家を持つくらいの意味しかないかも知れない。

 我々の家族は私が小さい時小さなアパートに住んでいて、いつかはまともな住居で暮らしたいと思っていた。その当時それはまさしく夢だった。

 その夢が叶った時は嬉しかったが、それは自分の人生の中で最終的な夢ではないと気が付いた。

 どうも夢とは自分の実力の向こうにあるか、非常に実現が困難なものであるらしい。

 私の知人に東大法科を優秀な成績で卒業した人がいる。その人の口癖は「もういつ死んでも良い」ということである。

 この人は大学卒業後東証一部の会社に社長候補として入社したが、故あって退職しなければならなくなった。

 仕方なく自由業に付いたがそれも成功して今は大きな組織になっている。そんな人がどうしていつ死んでも良いと言うのだろうか。

 その人は大地主の家に生まれ、子供は全て医師になり、尊敬されるような職業についている。何の心配もない。

 その人は自分が考える全てを成し遂げてしまったようだ。すなわちもう夢はないのだ。

 するとその人が生きている人生には夢がなく、何のために生きているか、意義を認められない。

 誰もが大なり小なり、計画レベルや大きい夢を持っているだろう。私の会社の社員の人でやはり東大法科卒の人の夢は「結婚すること」だ。

 もう会社を辞めてしまったので、近況は知らないが、多分その夢はまだ実現していないのではないかと思う。

 ここで問題は夢を実現するのが幸せか、それとも夢は夢のままそれに向かって努力邁進するのが幸福な事なのか分からないと言うことだ。

 一人の東大卒の人は全てのこと、夢だったかどうか分からないが、をやり遂げてしまった。もう一人の東大卒は結婚するという小さな夢もまだ叶えていない。

 フィギュアスケートの世界チャンピオンはそれに向かって努力をして、達成した。その人の次の夢は何だろうか。

 スポーツではもう夢を達成した。夢を達成したというのは人生における頂点に達したということだろう。

 ある程度長くその地位を守れることができるかも知れないし、オリンピックで3連覇するような人に取ってそれが夢だっただろう。

 しかしいずれ敗れる。そこからは人生においては下降線をたどるのではないか。すると人生を生きる目的は半減するように思えるのだが。

 私にはやりたい、達成したい夢がある。なかなかその夢に近づけないもどかしさはあるが、なんだか毎日が充実している。

 考えると今ある夢が本当の夢だったように思える。家を持つことや企業を経営することは一つの目標くらいに過ぎなかったのだろう。

 傍から見ていると夢を達成した人は沢山いるようだ。だが夢を本当に達成してしまえばもう夢のない人生をただ消化試合のように歩いて行かなくてはならない。

 夢は実現できないから夢である。総理大臣に成った人にも夢がまだあるだろう。夢は達成できない方が幸せなのだ。

酒巻 修平

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