銀行は斜陽産業?
銀行はつい先年まで大学卒業者の就職口として人気が一番に高かったのが、嘘のように斜陽産業と言われるようになった。
昔頭取候補だった人からそんな意見を聞いたから間違いがないだろうし、私もそう思う。銀行はいずれ消滅するとも言われる。
実際そうなるかどうか、将来のことは当たるも八卦当たらぬも八卦だが、今のままではそんな予想をされても仕方がないだろう。
一番の理由は何だろうか。現象から言えば資金調達意欲が低いことが上げられる。人手不足が原因で店舗を閉鎖する飲食業などとは様相が違う。
だがそれは最終の原因で、そうなる前提があるはずだ。それは国内、国外とも新規事業が少なくなってたこととか、企業が伸びていないことなど、世界的に経済が昔と比べ停滞していることの現れだろう。
世界全体もそうだが、日本では特に事業拡大の意欲が低いのだろう。国内、国外を問わず今までのグローバリズムは後退した。
もともとこのグローバリズムは過剰な競争を引き起こし、それこそ弱肉強食の世界を作り出そうとしている考え方だ。
これに対してどうもトランプ大統領は反対らしい。国は国の中である程度留まるべきだと考えているような気がする。」
彼の最大で最終的な目標は例えばロックフェラーなどの巨大資本家の力を削ぐことだ。
これはグローバリズムに反する動きで、私も賛成だ。国内の現象を観察すればグローバリズムの欠点が明らかになる。
大型スーパーマーケットの営業を安易に許可することで亡くなった零細企業は多い。個人経営の飲食店、文房具屋、肉屋、魚屋、八百屋、すし屋などは大きく数を減じた。
グローバリズムが進行すると貧富の差が拡大するし、会社は統合が増加してますます巨大化する。それは止めなければならない。
それに伴って資金を調達する手段も多様化して、銀行が大きな資金元であった時代は終わりつつある。
それに対して銀行が行っていることは投資信託の販売や手数料収入の増加だ。投資信託も問題が多い。安倍内閣は投資を奨励する制度を策定し、実行しているが、これは実体経済よりバブル経済を目標とするものだ。
煙草屋を経営する資金があれば投資に回す人も出て来るだろう。何しろ投資は始めるのも簡単で損や得をするのも迅速だ。
人は地味に努力をすることを忘れ、少ない労力で収益を上げる方へ傾く。本当に世界経済、いや経済とは如何にあるべきものなのか、政治との兼ね合いはどうだろうかなどを研究することもなく安易に投資に走る。
30年も持っていれば株式価格は上昇するだろうが、この人たちは株を資産として持つのではなく、投機対象としているため、大概の人は損をする。
銀行には情報は入り易いから、日本の経済動向、経営者の意識、また世界の動きに関する情報を持っているだろう。メガバンクは特にそうだ。
銀行はこういった情報を元に新しく有益な事業を起こすこともできるではないか。既存の取引の中で手数料をもっと稼ぎ、顧客に投資信託を販売することしか考え付かないのはどういうわけだろう。
銀行は莫大な資金量を持っているし、人材は豊富だ。それを生かし切れていない。行員たちは創造力がない人ばかりなのか。トップの人の指導力が不足しているのか。感心するほどの施策を打ち出さない。
政府の金融政策も足を引っ張ることがあるだろう。だがそんな障害を乗り越える資金と人材があるのを計算に入れていないのか。それらを無駄にして討ち死にするのだろうか。
だれか新しい事業のアイデアを持っている人を募って事業をやらしたらどうだろうか。リスクもあるだろうが、事業はリスクを巧妙に回避しながら進めていくところが経営者の手腕だ。それが分からない銀行は舞台から交代させられるだろう。
酒巻 修平