お城に住む

 そのお城では冬には暖房、夏には冷房が効いていてとても快適である。ただ冷房が効きすぎの感はあるが、それでもないよりよほどましだ。

朝7時くらいになると賄い担当の使用人が朝食の準備を行い、8時までには供せられる。献立はあまり変わり映えはしないが文句を言うのは賄いの人に悪いと思って遠慮している。

部屋は至る所にあり、複雑で迷路も多い。敵が攻めてきた時の守りの役をしているのか、部屋の模様替えもしょっちゅう行われている。

建物を出ると森林が広がり景色は良いし鳥が飛び交い囀る。時には猫も入り込み長閑なことこの上ない。住環境としては申し分なくこの城に住めるのは本当に幸せだ。

この城は相当昔私の5代くらい前に建てられたと聞いているが、重厚な作りのわりに日当たりも良い。夏には木々に遮られて直射日光も部屋の中までは差し込んでこない。

夜になると音楽も流れ、電気が煌々と光を放ち、眩しいくらいだ。だが煩い音を立てる機械があって、それが耳触りだ。

一度城の一番上に行ったことがあるがそこからは眺望が開け周囲何千キロも見渡せる。古い城ではあるが家電は全て揃っていて暮らす上での不便は全くない。

カーテンは全ての部屋に設置され隣の城から望遠鏡でも覗けない。だからプライバシーは守られているのでいつも裸でいる私でも安心である。

使用人同士が時々喧嘩をして大声を長く上げるのにはうんざりだ。それに文句を言うのだが彼らは野蛮で言うことを聞かない。

自分自身としては申し分ない住環境であるが、悩みの種は彼ら使用人である。私は大切で丁寧に対応してもらっているが、使用人同士の諍いは絶えない。

言い忘れたが城は広大で、一階の高さは15m以上あり、一つのコーナーでも50mくらいで、その中にいくつも部屋が配置されている。コーナーは合計で5つ6つあり、それぞれに調度品が置いてあるが、部屋はそこでもいくつも用意されている。

私はこの城の主であるが、たった一人の身。外出は基本的に許してもらえない。まるで江戸時代のお姫様のような扱いで、それが不満だが、大切な身、仕方がないと諦めている。

だがそんなことを言っている使用人たちの言葉は分からない。どこか異国から連れて来られたのか、我々が話す言葉を理解できない。

使用人たちは可哀そうに働くだけの人生を過ごしている。だがそれは仕方がない。何しろ頭脳が我々と違って低いのだ。

使用人は時には友達を呼んできて断りもなしにパーティーを開き騒がしい。だが友達が帰った後は悪口を並べる。彼らの人柄は受け入れ難い。

そうかと思うと何日も口をきかない時があり、そんな時は私にもっと親切になる。でも気持ちが悪い。どうせなら笑顔で給仕をして用事をしてもらいたい。

時々巨大な家具が運ばれてくることがあるし、新聞という邪魔になる紙も毎日運ばれる。それなのにそれを放置して部屋が狭くなる。

彼らの話声は大きすぎて煩い。どうしてもっと静かに話せないのか、文句を言いたくなるが何しろ私の言葉を彼らは理解できない。

ただ面倒な食事を調達する必要がないのは有難い。ここにくるまでは毎日毎日食糧を求めて行動していたので、使用人に対する不満は慎まなければならないと自制している。

どうして使用人たちはあんなに大きいのだろう。まるで巨人だ。あれでは城に住んでも狭い家になってしまうではないか。

可哀そうに、我々猫には理解できない。使用人たちがあれ以上大きくなると地球も食糧を生産するには狭くなるのではないかと心配している。

そしていつも戦争。同類同士が殺し合い、野蛮この上ない。彼らも我々と同じくらいのサイズになるともう少し余裕のある住環境を手に入れることができるのに。諍いもあのサイズだから起こるのではないか。

酒巻 修平

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