犬の考え、猫の考え

小さいころは家で犬も猫も飼っていたから私には彼らに対する拒否感はなかったが、妻はそんな経験がなかったので、ペットであってもそんな動物を毛嫌いしていた。

だが何軒か前の家(私は引っ越しが趣味なので)で強制的に犬を飼うことに決めた。その犬は首輪を付けていたので、元は誰かに飼われていたのだろうが、いつのころからか近所に野良犬として住むようになって、色んな家庭から餌をもらっていた。

だがそんなことをしているといつかは保健所に連れていかれて殺処分される運命にある。いつも餌をやる家ではもう一匹犬を飼っているので、2匹は要らない。

その犬は我が家をターゲットにしたのか、子供たちは用事で出かけても付いてくる。我々が散歩をしてもそうで、人間的に言えば情にほだされて飼う決心をした。

飼うことを決心した私はさんざん非難されたが、いざ飼ってみると余りの可愛さ、従順さに妻はその犬がいなければ日も過ごせない状態に陥ってしまった。

面白いことにその犬(テラと命名された)は家族では下から二番目で一番下の子を馬鹿にする。餌を食べている時に近づこうものなら「うう」と唸り声を上げてどうしても近づけさせない。

我々夫婦や上の二人の子が餌を少なくしても大人しく文句は言わない。犬はブービー的な地位にあるようだ。

下の子も人間だから大きくなる。そうすると犬より強くなり犬を叱るようになると犬はもう文句を付けなくなった。でも自分の下がいないので困っているようだ。

テラに幸いしたのが私の引っ越し好きだ。新しい先では隣に小さい子供がいる。その子が餌に近寄ると「うう」と唸り、自分の地位の方がその子より上だと知らせる。テラはそれで心の平安を得た。

それからもう一匹犬を飼ったがそれらの犬も寿命が尽きて死んでしまった。我々も年取った。もう散歩に行くのも億劫でペットは買わないことに暗黙の了解があった。

それからも引っ越しを2回して今の家に転居してから5年ほど経った。今度は猫の番だった。例に漏れず妻は猫嫌いだ。野良猫が家に入り込むと「しっ、しっ」と追い払う。

だが例外の猫がいた。その猫はいつも縁側に来て餌はねだるわ家の中に入ろうとするわ、どうしてもこの家に飼ってもらいたい意思が明らかだ。

今度は妻が到頭買う決断をした。私には異論はない。そして飼い出すと妻はそれこそ猫かわいがりに可愛がり、一日中猫の話をする。猫は「たま」と名付けられた。

猫は犬と違って下から二番目ではない。自分が一番上だと信じて疑わない。私が家長なのに敬意も示さない。一応言うことを聞くのは餌をやる人だ。

最近は時々餌をやるようにしている。そうするとこちらにあまねる(変換できない)。結局猫は人が好きなのではなく、自分の好きなように振る舞い大切なのは餌だけだ。

だからと言って買主はそれを嫌がらない。姿が良いし我儘なところが却って好まれる。それは小さいからであり、気高い感じがするからだろう。

本当は気高くはない。目が気高い感じがするだけだ。だが放しがたい。家に猫がいてなんとなく家の格が上がるように思えるのは何故だろうか。

今も家では昔飼った犬のテラの話をするところを考えるとやはり犬の方を我が家では好んでいるのだろうか。

犬は従順で猫は我儘だ。だから我儘な家には犬、心の広い家には猫だ。そう決めつけているが、そうでもないようにも思える。

今心配なのは私と猫のどちらが長く生きているかということだ。私が先死んでも猫は困らないだろうが、誰が面倒を見るのだろうか。

でもペットがいると家の雰囲気は良くなる。ペットなど真っ平だという人も私の妻のように飼い出すと片時も放したくなくなるのは保証する。

酒巻 修平

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